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「怪獣」タイトル

鴻池綱孝

〈第七夜〉 「レッドキングでダダ」


 僕の育った家庭は、おもちゃを買い与える事に関して少しばかり厳格な家庭だったと思う。年中行事でもないかぎり、おもちゃは買ってもらえなかった。したがって誕生日とクリスマスがチャンス到来となる。
 ‘67年の11月の、とある日、新宿は三越の特設怪獣売り場でマルサン商店謹製の『レッドキング』と出会ってしまう。パワー系怪獣の頂点に立つその怪獣を目前して、奮い立たない男子はいないだろう。まさに待望の商品化だ。しかし、今日はなんでもない普通の日。クリスマスを控えたこんな時に物をせがむのは、かなり無謀で無理目な行為だ。でも、ほしい。かなりほしい。ためらいのある懇願に、全く応じようとしない母親。

『レッドキング』

レッドキングはなぜ赤くないのか?子供時代から、悩んでいる諸兄に。お答え。
Lead〔led〕n. レッドは、鉛(なまり)の事なのよ。鉛の王。あ、これ推測ね!

 10分後、ためらいのあった懇願はいつしか、ヒステリックな状態へと変貌していた。涙とシャクリアゲに歪んだ顔面。ひょいと持ち上げられ連れ去られない様に、仰向けに寝て手足をバタつかせて絶叫だ。もはや「ヒト」ではない勢いだ。
 コレが現在、絶滅の危機に瀕していると言われている『ダダ〈駄々〉』だ。ダダをこねるのは60〜70年代には良く見られた日常的な風景だったが、時代はより豊かになり、その頃の『ダダッ子』は親になり、しつけも変化していくに連れ、今日では、なかなか見られなくなった。
 『駄々っ子』は、戦中戦後の物の無い時代、芋を食って生き抜いた親と、大量生産、大量消費の時代、お子様ランチで育った子供の、価値観のずれが生み出した高度成長期の落とし子だ。
 『三面怪獣ダダ』と同じ名を持つ、この行動は怪獣的であったし、子供本人にとっては最後の必殺技「スペシュウム光線」のような物でもあった。(因みに三面怪獣『ダダ』の名は、パリの芸術運動ダダイズムから由来し、その芸術運動ダダイズムは赤ちゃんの発する「だぁーだぁー」という声から名付けられた。・・・らしい。)
 「ひと月後のクリスマス迄、絶対に、手渡さないからね!」という約束で、親も対面を保ち、『レッドキング』は涙のお持ち帰りとなった。

『ナメゴン』初期生産品 『ナメゴン』

初期生産品。お髭が七本、丁寧に描かれる。目の割型のバリ取りも丁寧。(割型の合いが良いのでバリがあまり出ないのかも。)背中にひと吹きあるものの、イボイボには彩色が無い。5体を確認済み。エラーではない。

当時、入手したのはこっち。筆勢のあるお髭。イボには彩色がある。肉の薄かった目は
改善されている。底部の穴はガス抜きの為のもの。

 そして、クリスマス当日。前もって注文してあった、おばからのプレゼント『ナメゴン』が届いた。今まで手にしたことのないSFなフォルム。愛嬌のある目、ちょっとジジイな髭。グロい背中のイボイボ。すべてに魅力的な逸品。
 海水で死んじゃう脆弱な『ナメゴン』。ウルトラマンを2度にわたって苦しめた強者『レッドキング』。緩急の付いた素晴らしい選択で二体を入手。
 ツリーは毎年、使いまわしの鉢植えの木で、三角錐であるはずのその姿は、むしろ逆三角錘に成長し、『ワイアール星人』の様相だ。クリスマスのしきたりにのっとり、プレゼントはツリーの木の下へ置かれた。銀紙の巻き付いた鳥のもも焼き。食後には発砲スチロール入った、甘い、甘いアイスケーキ。怪獣イヤーのクリスマスの夜は更けていった。


2002年9月12日更新
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〈第六夜〉 マルサン商店『エビラ』『アントラー』『ガボラ』登場
〈第五夜〉 セメント怪獣
〈第四夜〉 マルサン商店『ウルトラマン』登場
〈第三夜〉 マルサン商店『ゴジラ』登場
〈第二夜〉 『マイ・ファースト・ウルトラマン』
〈第一夜〉 増田屋「ウルトラQ手踊り」『ペギラ』『ゴメス』登場


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