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「蕩尽日録」タイトル

南陀楼綾繁

7月某日 週末ノ三日間、熱暑ノナカ古書展ヲ巡回スル事【中編】


 朝十時、ウチを出る。外に出た瞬間から暑い、暑い。神保町の古書会館へ。今日は「愛書会」。思ったよりヒトが少ないので、ゆっくり見て回る。吉田健一『乞食王子』(新潮社)三百円、『現代生活のバイブル 性の流れの全集』(自由国民社)五百円など。後者には「漫画による人間一代のセックスの流れ」という記事に辻まことがマンガを描いている。

石黒敬七『巻物』
石黒敬七『巻物』
(昭和15年、六藝社)

 今日はあとがあるので、安本買いに徹しようと思ったが、石黒敬七『巻物』〈昭和15年、六藝社)三千円を見つけて、ちょっと悩む。背に傷があってこの値段はちょっと高いかとも思ったが、「蒐集狂時代」「欧州古書見聞記」などソソるタイトルが並ぶので、買っておく。ウチに帰って、「蒐集狂時代」を読んだら、石黒の友人の岩城七男という燐票、切手、古地図、刀剣、望遠鏡などを集める「生来の蒐集狂」について書かれたものだった。このヒトは熱中するとものすごいイキオイで集めるヒトで、中学時代に「まだ持っていない燐票を見付けると、ゴミ箱や往来やドブの中は勿論、馬の糞にまみれたやつでも、胸をときめかして拾った」らしい。そうして集めた五千種の燐票は、震災後に他人にやってしまったという。

 神保町から三田線に乗り、三田で浅草線に乗り換えて、五反田に到着。まず、西側に出て、〈ブックオフ〉を覗く。店員がやたらがなりたてるのがイヤで、あまり来なかったのだけど、昨日のような掘り出し物がタマにあるのは事実だ。ちょうど、すぎむらしんいちの『超・学校法人 スタア学園』(講談社)の単行本を集めているので、節を曲げてブックオフに通っている。三十分ほど回って、マンガと文庫本数冊買う。レジでいつものごとく「会員カードはお持ちですか」「持ってません」「十パーセントお得になるカードを百円でおつくりしますが」「いりません」という会話を交わす。ナンだか依怙地になってるみたいだけど、ブックオフのカードを持つのだけは身を売ったみたいで(考えすぎ)、どうもイヤなんだ。

清水一『すまひ読本 人の子にねぐらあり』
清水一
『すまひ読本 
人の子にねぐらあり』
(文藝春秋)

 うどん屋で昼飯すませて、東口に出て、五反田古書会館へ。もはや暑さは最高潮。それなのに、外に出ている台には男たちが群がっている。ココは安いからなぁ。今日は上の部屋に出てる本もやたら安くて充実している。田辺茂一『作家のうらおもて』〈行政通信社)、『夜の市長』(朋文社)、宇野浩二『独断的作家論』(文藝春秋新社)などに加えて、清水一『すまひ読本 人の子にねぐらあり』(文藝春秋)のように装丁に惹かれたものも含め、計十五冊買う。一冊平均五百円だ。目録注文しておいた、『郷土玩具』昭和8年2月号、二千五百円も受け取る。池田文痴菴の「キャラメル人形」という文章が載っている。月の輪書林の出品だ。

『郷土玩具』
『郷土玩具』
昭和8年2月号社

 その月の輪書林の高橋さんと、「彷書月刊」編集長でなないろ文庫ふしぎ堂の田村さんと一緒に会場を出て、近くのレストランに入る。高橋さんにビールをおごってもらう。ああイイ気持ち。あまりウマイので、もう一杯。今度は割り勘。前から不思議に思っていたので、田村さんに「どうして八月はいっせいにデパートで古書展を開くんですか?」と聞いてみる。答えは、「その時期はほかの催事をやってもヒトが来なくて成り立たないから、デパート側が古書展をやりたがるんだ。会場費も安いしね」とのこと。ふーん。初めて知った。

 会場に戻る二人と別れ、おそらく合計三十冊は入っているであろう大荷物にヨロヨロしながら、駅へと向かう。ホントはこのあと、東京駅の大丸ミュージアムで開催中の「木村伊兵衛写真展」を見るつもりだったのだけど、このママ歩いているとヤバイという気がして、おとなしくウチに帰ることにした。明日もまた出動予定なのだ。

(この項続く)


2002年9月19日更新
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7月某日 週末ノ三日間、熱暑ノナカ古書展ヲ巡回スル事【前編】
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4月某日 徹夜明ケニテ池袋ヘ出、ツガヒ之生態ヲ観察スル事
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