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ああわが心の東京修学旅行
第1回 データで見る昭和35年


東京浅草国際劇場観覧

 皆さんは修学旅行にどのような思い出をお持ちでしょうか。この番組は、昭和30年代から40年代にかけての東京への修学旅行を振り返る番組です。第1回は当時のデータを紹介しながら、昭和35年頃の修学旅行を見ていきます。

 文部省が行った昭和34年度の修学旅行の調査によると、東京を旅行した中学生の数は70万人余り、京都の55万を抜いて全国一となっています。中高を合計すると100万を超えますが、京都の108万には及ばず2位。ただ伸び率では、昭和28年調査との比較で82%増と京都の64%増を上回り、見学地として勢いがあったことがわかります。

表1.修学旅行先人気ランキング
  昭和34年(小中高生)
[都オリンピック準備局調査]
平成8年(中学生)
[日本修学旅行協会調査]
1位 東京タワー 128校 東京ディズニーランド 355校
2位 羽田空港 121校 国会議事堂 302校
3位 皇居 68校 東京都内 225校
4位 国会議事堂 54校 浅草・仲見世・浅草寺 189校
5位 銀座 39校 東京タワー 94校
6位 後楽園 26校  
7位 国際劇場 26校
8位 上野動物園 24校

 その東京では当時どんな所が人気だったのでしょうか。表1にランキングがありますが、昭和33年12月に完成した東京タワーが128校で第1位を占めています。東京タワーは平成8年の調査でも5位に入っており、東京のランドマークとして依然としてその地位を保っています。2位に羽田空港が入っているのは地方空港 が未整備だった当時の状況を考えればうなずけます。4位の国会議事堂は平成8年でも2位に入って おり、修学旅行の定番コースになっています。7位の国際劇場はSKDの公演で57年に閉場しました。平成8年の3位に「東京都内」という項目がありますが、これは生徒自身でコースを決めて実施する「自主見学」のことを指しています。これは30年代にはありませんでした。

遠足のしおり 修学旅行でいつも気になったのは、お小遣いとその使い道。昭和34年の文部省調査では、小学生で330円、中学生で840円といったところ。当時の木村屋総本店のあんぱんが1個12円だったので、あんぱんで換算すれば小学生は27.5個分、中学生で70個分となります。平成8年のお小遣いは小学生で4,400円、中学生で12,200円。あんぱん1個100円で換算すると、小学生が44個分、中学生が122個分となり、昭和34年よりも実質で1.6〜1.7倍増えていることがわかります。
 出す親の懐具合から見ていきますと、当時の公務員(国家公務員上級職・大卒)の初任給10,200円と比較して、小学生の小遣いはその3.2%、中学生は8.2%に相当します。平成8年の公務員の初任給は181,400円。それぞれの値は2.4%、6.7%となります。つまり家計にとって、昭和30年代の方が今よりも負担が大きかったのです。

表2.昭和33年の土産物の値段[日本修学旅行協会調べ]
品名 価格 品名 価格
乾海苔 150、250円 落雁 40、70円
江戸子飴 85、150円 カステラ煎餅 100円
江戸子饅頭 50円
福神漬 260、280円
羊羹 230、350円 日本橋羊羹 240円
文明堂カステラ 450円 最中 300円
雷おこし 50、100、150、180円    

 では当時のお土産はどのくらいの値段だったのでしょう。表2は昭和33年当時の土産物の価格一覧です。このうち最近の価格と比較ができる「乾海苔」、「文明堂カステラ」、「雷おこし」、「最中」の4点の価格の動きを見ると、乾海苔(中級一帖)昭和61年403円。文明堂カステラ(1箱) 昭和33年450円→平成14年1000円。雷おこし(常盤堂:袋入)昭和33年50-180円→平成14年 200-1000円。最中(1個)昭和33年20円→昭和62年70円。昭和34年から平成8年のお小遣いの伸びは小学生で13.3倍、中学生で14.5倍であるのに対し、土産物の価格の伸びは文明堂カステラ2.2倍、雷おこし4〜5.6倍、乾海苔3.4倍(昭和61年)、最中3.5倍(昭和62年)となっていて、相対的に見ると土産物は今の方が割安になっています。昔の子供は今よりもお土産を買うのに苦労したのですね。
 さて、そんな修学旅行生達はお小遣いでどんなものを買ったのでしょうか。昭和34年のランキングは次の通りです。

表3.昭和34年の東京土産ランキング(4月1日〜5月20日 東京・上野両駅にいた修学旅行生を対象。回答1429件)[日本修学旅行協会調べ]
1位 こけし 19.3% 5位 絵はがき 8.2% 9位 人形 3.0%
2位 浅草海苔 17.7% 6位 ワサビ漬 3.8% 10位 おもちゃ 1.0%
3位 雷おこし 16.9% 7位 しおり 3.4% その他 (52品) 11.3%
4位 ようかん 10.1% 8位 タワー模型 3.1%    

 修学旅行先人気第1位の東京タワーの模型が8位で、どこの観光地でも見かける「こけし」が1位なのは意外でした。また一瞥すると日持ちのする食品が多いことに気が付きます。これは汽車による長旅でも傷むことが少ないからでしょう。人形やおもちゃは弟や妹へのお土産なのかも知れません。ところでこの時期「ペナント」はなかったの?

[参考文献 『値段史年表』週刊朝日編 昭和63年]

 当時実際に東京見学に行かれた方も多いと思います。その時の旅のしおりや写真、学校で書かされた感想文などがお手元にありましたらご投稿下さい。
 次回からは当時の修学旅行の見学コースに沿って東京の街を見ていきます。


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