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「ら〜めん路漫避行」タイトル

第22回 暗闇坂せあぶら変化
〜麻布坂一番勝負
刈部山本

昨年末のイベントで、拙著ミニコミ誌の新刊を初売りした際、お越し頂いた方、誠にありがとうございました。新刊08冬号は世田谷の近代水道遺産・戦争遺跡を巡りながらB食を喰い散らかすという企画(詳細は文末へ)。その中で世田谷へと到る道程として、08夏号の首都高巡りからの流れで、浜崎橋JCTから一ノ橋〜谷町JCTから渋谷へと抜けたわけだが、一ノ橋JCT周辺の散策として坂道巡りをするも、あまりにページ数が膨大となり、別冊として手製のコピー誌に仕上げた。数量限定のため多くの方にご覧戴けなかったこともあり、今回はこの中から麻布の坂と周辺の古建築群をご覧頂きたい。

東京メトロ麻布十番駅からスタート。麻布〜六本木といえば言わずと知れた東京の都心部で六本木ヒルズ・夜の街・大使館といったところが連想されるだろうか。自分もそんなイメージをマスメディアから植えつけられていたので街歩きの対象になるとは夢にも思っていながったが、我らがタモさんこと森田一義氏が著書『TOKYO坂道美学入門』で麻布界隈の坂を丹念に巡っているのを見るにつけ、半信半疑ではあったが興味が湧いてきていた。
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実際に降り立ってみると麻布十番商店街は何処の町でも見かけるファストフード店など多いが、その間で案外と年季の入った商店建築が多く、看板建築の体裁を持った商店も少なくない。

麻布十番商店街

そんな商店を眺めつつブラブラすると、嘗て麻布十番温泉のあった場所に出た。1Fの越の湯という銭湯に以前来たことがあるが、まさか廃業するとは夢にも思わなかった。この連載にとって格好のロケーションになったはずだったんだけどなぁ。
ここで商店街を逸れ、いよいよ坂道へ。オーストリア大使館に沿って200m近く急勾配が続く暗闇坂を見上げると、上り口に錆びたトタンの色見がなんとも絶妙な理髪店が待ち構えていた。

理髪店

国際協力銀行麻布支店などが連なる高い石塀に鬱蒼と茂る木々という凡そ都心部とは思えない光景を目の前にこの理髪店。なんともデキスギである。

暗闇坂

この辺は車の交通量が多くしかもデカイ外車が殆どなので坂の鑑賞には辛いものがあるが、それでも坂自体は急勾配はモチロン湾曲がキツく長く続いており魅惑的だ。反して由来は現在と同じく木々が鬱蒼として暗かったからというなんとも味気ないものだが、我々にとって暗闇坂といえばはっぴぃえんどの曲「暗闇坂むささび変化」。松本隆もこの風景を眺めたのかぁ…なんて思いながら「ももんが〜ももんがぁ〜」と口ずさみながら坂を上るのは何人もいたことだろう。
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坂を上りきると大黒坂・一本松坂・暗闇坂が終結する地点となる。3坂が集中するのだからそりゃもう大変な渋滞で、なんと交通整理員まで配されている。

狸坂

ここから狸坂へと到る小路へと入る。この道と暗闇坂に挟まれた土地はなにやら意匠の凝ったようなシルエットの建造物が垣間見られる。

塀
勝手口

よく見るとステンドグラスの縦長の窓があり、さらに正門入口には扉を囲うようにモザイクタイルが埋め込まれ、その模様は教会のそれに近い。

ステンドグラス 玄関

コンクリート造の個人教会のようなシルエットで、柱や庇の意匠、そして紋章のような三角形が目に付く。

外観 2F意匠

この先、道がガクッと急降下する狸坂。

狸坂

坂下の方のお宅は立派な日本家屋ながら急勾配故、石垣が異様な高さになっている。2Fからの眺望は通常の日本家屋ではありえない高さだろう。

日本家屋

坂を下りきると二又になっており、左の道を進む。道沿いには古くからの酒屋など、嘗てはちょっとした商店街でもあったかのような道ながら、そのスグ裏手には真新しいマンション群が立ち並んでいてハイソな雰囲気に満ちている。

狐坂

徐々に道はゆるやかに傾斜を帯びると、狐坂が始まる。狸があれば狐もあるというわけだが、手付かずのような樹木が左手南側に続いている。その樹木に覆いかぶされたようなモルタルの平屋が。

テーラー

ショーウインドにはスーツが掲げられており、嘗てはテーラーだったのだろうか。その隣は工事フェンスに囲まれた下見板張りの2F建て木造建築で、ちょうど来客があったところで家主が出てくるところに出くわした。

下見板張り

立ち退きを迫られているのか不明だが、麻布にこんなハードに廃頽した物件があろうとは!

坂を巡るはずが想わぬ名古建築のオンパレードに高揚しっ放しで流石に息切れした。まだまだ周囲にはスバラシイ坂と埋もれた名物件が残っているが、今回は一先ずここまでとして、狸坂を一本松坂、仙台坂と下り、首都高一ノ橋JCT直下の高輪麻布線は二の橋に出る。
ここはタクシー通りで、南北線が通る以前は陸の孤島と呼ばれていた。一の橋〜古川橋間の夜は六本木と品川・恵比寿・五反田を繋ぐ道路としてタクシーの往来が激しく、嘗ては路駐の取締りが緩かったとあって、深夜営業のタクシードライバー相手の飲食店が軒を連ね、未だその趣を残している。特に夜といえば豚骨!肉!脂!というわけで、煤けた感じの男臭いラーメン店が目立つ。
勢得

麻布ラーメン
11:00〜05:00
年中無休
港区南麻布2-5-16

古くからの営業と思いきや、屋台から出発してここに店舗を構えたのは99年だそうな。しかし往時の環七の豚骨醤油ラーメン店を髣髴とさせる男臭い活気がある。
店内の床は油面スカイウォーカーって感じに滑るスベる。L字カウンター10席ほどとテーブル席が結構あって、数人連れでみなラフな格好でビールとつまみでやってる。

正油ラーメン麺硬

正油ラーメン麺硬¥700は見た目にもかなり色見が濃く相当な粘度。その上、表面に黄色く見えるほど油の膜が張っており、より濃厚さが増している。
麺は黄色みがかった縮れ太麺。硬め指定が功を奏して麺の粉っぽい味わいが楽しめた。スープとの絡みもよく、とてもバランスがいい。
具のチャーシューはなかなかよく煮込まれていて柔らか。
これはマサに夜な夜な都心でガッツきたくなった腹にはもってこいのラーメン! 最近流行らないタイプだが、幹線道路沿いの文化としていつまでも残って欲しい。

歴史ある坂の街には古い建物も残っている。その隣に、ちょっと昔の幹線道路ラーメン文化が同じ街に見られるという文化的断層を見たようで非常に興味深い。都心部の古建築は壊滅的で見るところは少ないと舐めていた自分が恥ずかしいほどの発見の数々だった。今後も気長にじわじわとこの界隈を歩いて見たいと思う。



刈部山本

刈部山本(かりべ・やまもと)とは・・・
ラーメンなどのB級グルメを主食とし赤線跡・軍事遺跡・レトロ建築等を巡る路地裏徘徊人。
東京の下町、谷根千の路地裏に潜む古本喫茶を自営。レトロ少女マンガ・サブカル・町歩き等の古本・ミニコミが揃う空間で最高品質の珈琲と自家製ケーキを持て成す。
ふるほん結構人ミルクホールHP http://kekkojin.heya.jp/




2009年 2月 4日更新
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