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「蕩尽日録」タイトル

南陀楼綾繁

4月某日 徹夜明ケニテ池袋ヘ出、ツガヒ之生態ヲ観察スル事


 明日の朝までにカタをつけなければアウトという原稿があるのだが、なかなか手が着かない。いっちょまえの作家ぶってるのではない。やりだしたら何時間もパソコンの前から離れられないことが判っているので、つい先延ばしにしているだけなのだ。そんな状況で、ビデオで映画《ヒーロー・イン・チロル》(1998、オーストリア)というを観る。チロルと云えば、ヨーデルとウィリアム・テルみたいな他国人の先入観をそのまま映像化してしまった「チロリアン・ロック・ミュージカル」。ホントに意味なく馬鹿馬鹿しくて楽しめる。ウェブを検索してみたら、数年前に〈BOX東中野〉でこの映画と《ロッキー・ホラー・ショー》《鴛鴦歌合戦》のバカミュージカル三本立てのオールナイトがあったようだ。さすが。ニキ・リストという監督のほかの作品が観たくなった。

 そのあと夕飯を食って一休みしてから、ようやく決心がつき、パソコンのある部屋へ向かう。本の山の中から参照する資料を引っ張り出し、しばらく書いてまた別の山に向かうという繰り返し。完成したときには朝9時になっていた。達成感で浮かれて(でも締め切りを大幅に過ぎてたんだけど)眠る。ハイになってるときはしょうがないモノで、3時間後には目が覚めてしまう。原稿につける図版を用意して、宅急便で送ったら今日の仕事は終わり。日曜日の午後をムダに過ごすのもなあと思い、大雨の中を池袋に向かう。

本の山

 池袋に着いて、目指すはサンシャインシティ。休日のサンシャインは、甲高い声のカップルばかりで、そいつらをすばやくパスしながら目的地へ向かう。ココの「アルパ」の奥の路地みたいなヘンな場所で、定期的に小規模の古本市が行なわれているのだ。あまり古い本はないのだが、安いのがとりえ。菅原克己の詩集『夏の話』(土曜美術社)を500円、『定本菅原克己詩集』(永井出版企画)を3000円で買う。サスガに古本市の会場は静かだなあ、落ち着くなあと思っていたら、しばらく経つうちにヒマつぶしらしいカップルや子供ばっかりになってしまう。こういうときは彼らの会話を楽しむに限る。あるカップル、男「俺の弟の友達が〈麻薬〉を手に入れてさあー。で、家においとけないから別の場所に隠したんだけど……」、女「マジー?」(ドラッグではなく〈麻薬〉というところがウソくさい)、別のカップル、女「チョー古い本を探してるんだけど」、男『いつ頃の?」、女「1997年とか……」(スゴイいきおいで歴史が流れてんだねェ、キミの場合)などなど。

 疲れてきたけど、せっかく池袋まで来たんだから、もうちょっと回っておこう。近くの〈HMV〉へ。大正九年[KYU-BOX]、小島麻由美[ロック・ステディ・ガール]、小林旭[アキラ3][アキラ4]を買う。大正九年はオール宅録のひとりテクノで、デビュー作から聴いているが、今回メジャーデビューしてしまった。最近の音楽におけるインディーズ/メジャーというのは、たんなる流通ルートの差だけで本質的にたいした違いはないので、べつにメジャーから出したってどうもしない。ただ、ジャケットが奈良美智というのがどうも……(まァ雰囲気をつかんだイラストではあるが)。そのあと〈ジュンク堂書店〉〈リブロ〉と回って、けっこう丹念に棚を見る。先週は仕事でソウルにいたので、日本の大書店を覗くのは久しぶりなのだ。買ったのは、副島輝人『日本フリージャズ史』(青土社、2800円)のみ。ウチに帰って一眠りしたあと、メガネを掛けようとしたら、左側のレンズがポロッと落ちる。ワクが壊れてしまったようだ。二年前にソウルでつくったモノで、ワリと気に入ってたんだけど。そのあと血迷って、右側のツルをバキッと折ってしまい、これで完全にご臨終でした。


2002年5月30日更新
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4月某日 電脳機械ヲ購入スルモ気分高揚セザル事


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