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「まぼろし書店」タイトル

店長神保和香子

 まぼろし書店神保町店/第17回は『屋根裏部屋の旅行鞄』をお送りします。
(著者の方々の敬称は略させていただきました/商品の価格は税込価格です)


 息子とのんびり過ごした農場の夏休みは、またたく間に過ぎ去ってしまった。いよいよ明日は都会へ戻らなければならない。そうだ、あいつが川に落してしまった野球帽の代わりに、私の子ども時代の帽子を探しておいてやろう、屋根裏に母さんがしまいこんでいるはずだ。あったぞ。あの茶色のトランクだ。祖父様のお下がりだが、今見ても貫禄十分だ。鍵の番号も覚えているぞ、さぁ、開いた……!

 時代設定・地域設定共に全く不明のイントロダクションにおつき合いいただきまして、ありがとうございました。
 今回のまぼろし書店は、「あの頃の夏を想い出させてくれる本」の特集です。
 まずは、光り輝く「夏休み気分」を呼び起こしてくれる写真集から、ご紹介しましょう。

「今森光彦とめぐる里山の四季」 アマゾンへようこそ!

「今森光彦とめぐる里山の四季」
別冊太陽・日本のこころ117
今森光彦
平凡社
4-582-92117-5
税込価格2,415円

 今森光彦といえば、昆虫写真の第一人者。今森作品では、生き生きした昆虫達の姿はもちろんの事、その背景である自然の美しさが印象的なのです。
  「里山の四季」は、昔ながらの農村の景観「里山」の四季を、今森光彦の写真で色鮮やかに語る一冊。
 私にとっては、特に印象的なのは、真夏の田園光景です。小学生の時に夏休みごとに訪れた、祖父母の家を思い出すからでしょうか。
 草むらに寝転がった時の、乾いた土と草の匂い、麦わら帽子越しの太陽の眩しさ。蒼い空にモクモクと立ち上がる入道雲。 夏木立の陰の中で、ひっそりとした真夏の神社の境内。真夏の里山には、色濃い光と影の世界が、どこまでも広がっているのです。

[こんな本もあります]
「今森光彦昆虫記」「今森光彦昆虫記」/今森光彦/福音館書店/4-8340-0810-X/税込価格3,360円
 写真家・今森光彦に興味を持たれた方に、この「昆虫記」を、是非とも楽しんでいただきたいです。
 図鑑のように分類するのではなく、季節ごとに、昆虫たちを植物とともに1700枚の写真で紹介している「自然界の歳事記」。季節が変わる度に、本棚から取り出してじっくり眺めたい、愛すべき本であります。
「なつのいちにち」「なつのいちにち」/はたこうしろう/偕成社/4-03-331340-0/税込価格1,050円
 「夏休みエッセンス」を凝縮したような、素敵な絵本。ページをめくる度に、眩しい「夏」が現れます。

「この道はいつか来た道 ふるさとの歌がきこえる『こころの歌』」 アマゾンへようこそ!

「この道はいつか来た道 ふるさとの歌がきこえる『こころの歌』」
吉野晴朗・写真
ピエ・ブックス
4-89444-248-5
税込価格 2,310円

  細くて蛇行している道を「この道はどこに続いているんだろ」とワクワクしながら歩いていく私。道の周囲は雑木林か、原っぱ。そして、絶対、ひとりで歩いています。それが、私の夏休みのイメージなのですが、そんな心の光景にそっくりな写真が載っている写真集を見つけました。
 実は、懐かしい唱歌・童謡40曲を、その歌詞から連想される美しい情景写真とともに紹介している本なのです。私の「心の夏休み風景」は「この道はいつか来た道」でした。皆さんのお気に入りの光景は、どの歌でしょうか?

「コドモノカガク」 アマゾンへようこそ!

「コドモノカガク」
タカベセイイチ
架空社
4-87752-100-3
税込価格1,260円

 「きんぎょのおつかい」「きんぎょのおまつり」など、きんぎょシリーズが人気のあるタカベセイイチですが、今回は「コドモノカガク」という絵本をご紹介いたしましょう。この表紙をじっくりとご覧くださいませ。思わず手に取って頁をめくりたくなる魅力に溢れているではありませんか。懐かしい絵柄と、それを引き立てるレトロな色遣い。禁じられた遊び(?)に興ずる子どもたちの表情が、秘密基地時代の自分を呼び起こします。


 さて、ここからは、まぼろし書店吉例・オリジナル文学史シリーズ「夏休み篇」。
 懐かしくほろ苦くもある、上質のエンタテイメント小説が目白押しです。

「少年時代(上)」 アマゾンへようこそ!
「少年時代(下)」 アマゾンへようこそ!

「少年時代(上)」
ロバート・マキャモン
ヴィレッジブックス文庫
ソニー・マガジンズ
4-7897-2607-X
税込価格882円
「少年時代(下)」
ロバート・マキャモン
ヴィレッジブックス文庫
ソニー・マガジンズ
4-7897-2608-8
税込価格945円

 異国アメリカのお話ながら、上質の「郷愁」を感じさせてくれる不思議に美しい物語です。特に、私のお気に入りは、終業式の日の描写。主人公の少年達が、夏休みの始まりを祝うのですが、胸が痛くなる程に輝かしくて素晴らしい場面なんです。
 マキャモンのホラー小説は苦手、という方にも、この「少年時代」は、是非とも詠んでいただきたいです。

「川の名前」 アマゾンへようこそ!

「川の名前」
川端裕人
早川文庫
4-15-030853-5
税込価格 735円

 いよいよ、5年生の脩にとって、この町に引っ越して来て始めての夏休みが始まる。二人の親友と一緒に、近所の川を遡っていくと、そこには「夏の怪物」が居たのだ。脩は、「夏の怪物」を自由研究のテーマに選ぶ事にした…。
 これぞ、日本の誇る「スタンド・バイ・ミー文学の代表作」と、言えるでしょう!

「八月の博物館」 アマゾンへようこそ!

「八月の博物館」
瀬名秀明
角川文庫
4-04-340506-5
税込価格780円

 いつもだったら塾があるから最短距離で帰るけど、終業式の今日くらいは寄り道してみよう。自分の住む町なのに初めて通る道。初めて見る建物。そして、初めて一緒に遊ぶ友達。
 「パラサイト・イブ」で衝撃的に登場した瀬名秀明。作者の「エンタテイメントを書く」という事に対する、微笑ましいほどの真面目さが、この小説に奇妙な魅力を付け加えています。

「トムは真夜中の庭で」 アマゾンへようこそ!

「トムは真夜中の庭で」
(岩波少年文庫041)
フィリパ・ピアス
4-00-114041-1
税込価格756円

 せっかくの夏休みを親戚の家で暮らすことになったトム。退屈しきった彼は真夜中に、古時計が13時を告げるのを聞きます。13時に、存在しないはずの庭園を見つけたトムは、不思議な少女と出逢う…。
 私のような天の邪鬼な人間でも、素敵なお話を読んだ後は、洋服箪笥の奥に扉が無いか何回も確認したり、急に寄り道が好きになってみたりするのです。が、グランドファーザー・クロックを買ってくれ、と親にせがむ勇気は流石にありませんでした。

「昭和夏休み大全 ぼくらの思い出アルバム」 アマゾンへようこそ!

「昭和夏休み大全 ぼくらの思い出アルバム」
市橋芳則
らんぷの本・河出書房新社
4-309-72737-9
税込価格1,470円

 最後にご紹介するのは、おなじみ、らんぷの本シリーズから。なんと、「昭和夏休み大全」という、今回の特集にど真ん中ストライクな本が出版されているのです。
 著者の市橋芳則は、愛知県にて歴史民俗資料館の学芸員を勤める昭和30年代生まれ。
 「海水浴」「夏の味覚」「家族旅行」「臨海学校」「四苦八苦した宿題」「絵日記」などなど、夏休みの思い出が豊富な図版とともに綴られていきます。図版の豊富さは質も量も、半端じゃないです。当時の子供達のモノクロ写真、作文、パンフレット、かき氷機、海辺のお土産物の数々、子ども向け雑誌の表紙、扇風機コレクション……。
 そういえば、子どもの頃、扇風機の真ん中・回転する扇中央の金属部分に、消しゴムを押し付けて回転を遅くしたり、鉛筆を押し付けて同心円を描き続ける、といった遊びが好きでした。

 
 夏休みを満喫するべく準備万端な方、あれやこれやで夏休みどころでは無いという方、一年中夏休みという方。どんな方にも夏休みの思い出はありますよね。お気に入りの1册が見つかる事を願っています。

 第17回『屋根裏部屋の旅行鞄』、いかがでしたか。
 皆様からのリクエスト・情報提供など、心よりお待ちしております。
 どうぞ、これから末永く「まぼろし書店・神保町店」をよろしくお願いいたします。


『やられた!』
『渦巻き(二の巻)』
『渦巻き(一の巻)』
『まぼろし書店のおすすめ新刊/2005年・赤の巻』
『まぼろし書店のおすすめ新刊/2005年・黒の巻』
『万博と近未来の夢』
『雪月花のこころ/桜の巻』
『懐かしの町・街角散歩/後編』
『懐かしの町・街角散歩/前編』
『だまされる快感』
『秘密基地大作戦』
『疾風の新着情報!!』
『疾風の新着情報!』
『入魂の一冊』
『名画座の時代』
『あのころの風景』


2006年7月27日更新
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