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ベルギー仕入れのマッチラベル 12月某日 荻窪及ビ西荻窪ヲ訪レテ此ノ街ノ面白ヲ再認識スル事
南陀楼綾繁

 朝9時に起きて神保町へ。いつもは10時近くまで寝ているくせに、休みの日に限っては勤勉だなあ。今日の古書会館は「書窓展」。10時過ぎに到着したが、拍子抜けするほどヒトが少ない。この方がすいててイイのだが。「あきつ書店」のコーナーに行くと一冊200円から500円程度で、いい本がごろごろ見つかる。尾崎一雄『単線の駅』(講談社、前に買ったのと違う版)200円、山本健吉『私小説作家論』(実業之日本社)300円、書物雑誌『本』1964年5月号、200円、久米正雄序『社交ダンス』(愛隆堂)400円、野口冨士男『しあわせ』(講談社)400円と買い込むが、合計しても1500円。まさにしあわせな気分。二日目でコレだから、初日はさぞやスゴかっただろう。
 ほかにも、河野鷹思が表紙を描いた『蝋人形』昭和12年9月号が2000円、『実物大型紙つき実用袋物とハンドバッグの作り方』(主婦之友社)1000円、結城昌治『志ん生一代』上・下(朝日新聞社)1000円、大谷晃一『評伝武田麟太郎』(河出書房新社)900円、とまァリーズナブルな値段で買えた。わーい。

 その後、〈RBワンダー〉に寄り、1階で結城昌治『暗い落日』『炎の終り』『葬式紳士』を各300円で。結城昌治の文庫本、わずか一カ月で30冊も買ってしまった。3階で紙モノ、戦後雑誌を見るが、いいモノは多いのだが値段が高めでちょっと手が出ない。 

同潤会江戸川アパート

同潤会江戸川アパート

 友人のバスケくんと後楽園で待ち合わせ、彼の車に乗せてもらい、「同潤会江戸川アパート」に行く。同潤会は関東大震災後の都市政策として建てられた日本初の本格的な集合住宅なのだが、老朽化が進み、ここ数年、方々で取り壊しや大規模な改築がはじまっている。江戸川アパートも、年末には取り壊しが開始される。
 一ヶ月前に、ココに部屋を持っていたジャーナリストの室謙二さんから部屋の鍵を預かって、どうしても運び出しておきたい本を段ボール二箱分、預かることにした。その後忙しくなって、取りに行く暇がなかったのだ。この建物が地上から消え去る前に、間に合ってヨカッタ。

 荷物を仕事場に運んだあと、ちょっと細かい用事をこなし、高円寺へ。〈高円寺文庫センター〉で、ココに来れば買えるだろうと思っていた、藤木TDC・ブラボー川上『東京裏路地〈懐〉食紀行 まぼろし闇市をゆく』(ミリオン出版)1600円がやっぱり置いてあったので、すぐに手に取る。ふと見れば、ヨコにいる帽子の男性に見覚えが。ライターでオンライン古書店主の北尾トロさんだった。
 「これから古書展行くんですよ」「しばらく行ってないなあ」などと立ち話したあと別れ、ぼくは高円寺の古書会館へ。今日は「杉並書友会」。入り口で本を見ていると、北尾さんがあとから「やっぱり来ちゃった」と云いながら入ってくる。やはり、古書展にはナニか強烈な吸引力があるのだ。
 今日の収穫は、田部隆次『日本の怪談』(大日本雄弁会講談社)500円。装丁が花森安治なので買った。ほかに『滑稽修養 男女百癖』(帝国法律研究会娯楽部、昭和4年)500円、古山高麗雄『龍陵会戦』(文藝春秋)500円、井上司朗『証言戦時文壇史 情報局文芸課長のつぶやき』(人間の科学社)800円など。

 例によって荷物の量が多くなったので、あとは古本屋に寄らずに待ち合わせの時間までツブせばいいのだが、ちょっと遠いところに出かけると次はいつ寄れるか気になって、目一杯回ってしまう。で、荻窪へ。

荻窪のささま書店

荻窪のささま書店

 とにかく安い本が並ぶ〈ささま書店〉に行くと、外の均一本コーナーにも、ナカの文庫売り場にも、ぼくが最近集めている結城昌治の角川・中公・集英社・講談社文庫の主要作が30冊以上、どばっと並んでいた。値段も100円から250円までと手頃。ここ数週間、店やネットで必死に集めたのはナンだったのか。とりあえず、持ってないはずの8冊を買う(あとでリストを見直したら買い逃しがあった)。
 そのあと、〈常田書店〉へ。南口の商店街から一本ヨコに入るところなので、いままで気づかなかった。ミステリや大衆小説の初版本の一冊一冊にパラフィンが掛かって整然と並べられている。値段はやや高い。ただ、店内には椅子が置いてあったり棚と棚との間が広く、初版本の多い古書店でいつも感じる息苦しさはない。山内義雄『遠くにありて』(毎日新聞社)800円、保昌正夫『横光利一全集随伴記』(武蔵野書房)1500円を買う。さすがに疲れてきたので、北口の〈ブックオフ〉は今日はヤメる。

興居島屋の店内

興居島屋の店内

 西荻窪へ移動。南口の新刊書店〈信愛書店〉へ。一年前ぐらいに新店舗になってから、まだ二回目だ。相変わらず本の置き方がうまいなあ。三浦展『大人のための東京散歩案内』(洋泉社新書)720円と、『酒とつまみ』なるミニコミの創刊号を買う。さらに古本屋を数軒回ってから、ようやく今日の目的地である(でもやっぱり古本屋の)〈興居島屋〉(ゴゴシマヤと読む)にたどり着く。店主の石丸さん、ライターの岡崎さんと飲むことになってるのだ。この店には何度も来ていてイイ本を何冊も買っているのだが、石丸さんに挨拶するのは初めて。先日、石丸・岡崎で行ったベルギーの古本屋のハナシを聞きながら、棚を見る。おっと、ベルギーのマッチラベルがあるじゃないか。10枚選んで買う。

ベルギー仕入れのマッチラベル

ベルギー仕入れのマッチラベル(オランダ製)

 岡崎さん到着して、三人で南側の居酒屋〈ガブリ〉へ。ベルギーには村全体に数十軒の古本屋が並ぶ古本村「ルデュ」がある。石丸さんが東京のドコかに「古本村」をつくるとしたら……と云い出す。そういうのがホントにできたらオモシロイ。あとから、さっき声を掛けておいた北尾トロさんも合流。なんだか、何度もお銚子を注文して、日本酒を大量に飲んだ。
 みなさんと別れ、中央線上り電車に乗り込む。ココからウチまで1時間近く掛かるのが、ちょっとツライ。今日は荻窪、西荻窪と回って、やはり中央線の古書店はいいなと思った。品揃えの幅が広いので、ある作家の文庫を全部蒐集するなんてときには、力を発揮する。ぼくは学生時代に西荻に住んでいたが、あのときは一年掛ければたいていのシリーズは揃えられたものだった。もう一度、中央線に住みたくなってきた。 


2003年2月13日更新
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