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「第二小学校」タイトル

第8回「小さな小さな遊び」の巻

串間努

王冠


 昔のガキはマキの枝で刀を作ったり、葉っぱで笛、笹の葉で船、と自然の素材を使った細かい遊びをしていた。
 ところが昭和40年代のガキは化学工業製品で細かい遊びを子どもの世界で開発して遊ぶのだ。
 「ヒゴノカミ」なんて使えないね。だせーネーミング、江戸時代じゃないんだから。
 道端に生えている「スカンポ」や「サルビアの蜜」の直喰いなんてバッチくてできないよ。だって家にスナック菓子がおヤツであるじゃん?
 ドングリ笛や「ほうずき」なんて懐かしくないよ。誰もそんな遊びに乗ってこないよ。
 今回はそんな衛生的で工業化時代の子どもの遊びを紹介しよう。

王冠

 私が小学校にあがった時は、ちょうど木製の机と、足が鉄製の机とが交代する時だった。二年生までは隣の子とつながった完全に木製の机を使っていたけど、これって、小学低学年にはけっこう重くて、掃除の時間はヒーヒーいいながら運んでいた。
 雨が降った日や、短い休み時間は、「机の上」が私たちの遊び場でありゲーム盤だった。
 木の机の表面は何年も使われているので、デコボコしていて、下敷きがなければ鉛筆で字が書けないほどだ。それをいいことに彫刻刀などで細かい穴をあけ、そこをホールに見立てて、「ゴルフゲーム」をした。玉は消しゴムのカスを丸めたものかギンダマ鉄砲の玉。偶然、鉛筆のキャップにゴルフクラブ形のものがあって、それで玉を弾いてお父さんの気分になった。
 「おはじきすくい」というのを知っているだろうか。1998年での時点で、ガラス製のおはじきが誕生して100年になった。おはじきを机の上にバラまいて、それをスチールのカレースプーンですくい上げていく。スプーンの横からおはじきを目がけてしゃくるようにすると、タイミングがよければ、ツルンとスプーンにのっかるのだ。これは結構技術が必要で難しかった。
 机がスチールになってから流行ったのが、「スーパーカー消しゴムレース」だ。

スーパーカー

 スーパーカーというのはポルシェなどの外国産の格好いい車。昭和50年代にスーパーカーの人気が爆発的に高まったのは、週刊少年ジャンプに連載された「サーキットの狼」という漫画からだ。そして昭和52年にスーパーカー消しゴムが作られた。人気が高かったのは「ランボルギーニ・カウンタックLP500S」。

スーパーカー消しゴム

 スーパーカー消しゴムはスーパーカーの形をしたもので、本物の消しゴムだというが、ほとんどのものは紙を汚すだけで消えない。だいたい、消しゴムとして使って形を壊してしまうようなことはしないから、集めて楽しむだけだ。大ブームになったのは、そこに遊びが加わったからだ。ボールペンによるレースである。レースタイプの車種だから、「これでレースができないかな」と誰かがなんとなく考えたのだろう。机の上で、順番にノック式ボールペンのお尻で弾いてレースをしたり、弾き飛ばしたりした。勝てばメンコのように相手のが貰えることもあった。スチール机は滑りが良かった。普通のノック式ボールは胴が丸いから、机の上に置くと不安定だったけど、三菱のBOXYボールペンは、横が平らだったから、机に置きやすかった。ゴールへ着く速さを競うから、車輪の部分にホッチキスの針を止めたり、床のホコリにこすりつけたり、石油につけて堅くしたりするなどの改造をした。どれも摩擦の抵抗を少なくできるからスーッと滑るのである。中にはボールペンを解体して、バネを二つ入れるヤツまでいた。チョロQや、ミニ四駆のように自分で改造できるから、大ブームになったのだろう。
 今の子どもも、机の上で工夫して遊んでいるといいなと思う。

王冠の裏 昭和45年ころ、駄菓子屋で現金がその場で当たるプレゼントがあったことを信じてもらえるだろうか。ビン入りのコカコーラの王冠の裏をめくると「¥10」とか書いてある。最高はなんと500円。買ったお店のその場で、お金が貰えるというのは、子どもにとってはとても魅力的だった。と、いっても一日10円の限られた小づかいではコーラをたくさん飲むことはできない。私たちはなんとかして王冠を手に入れることを考えた。
 ある日、頭のイイヤツが画期的な方法を考えだした。その頃はビンのコーラの自動販売機があり、販売機の前面にはセン抜きの箱が付いていた。そこにたまった王冠をちょうだいしようというのだ。この箱は 取り外すこともできたから、逆さまに振るとジャラジャラ王冠がでてくる。コーラを買わないでも王冠がガッポガッポ手に入るわけだ。スロットマシンで大当たりしてコインがジャラジャラ出た時よりもシアワセな気持ちだった。王冠の裏にはハズレだとイラストが書いてあった。クラシックカーや世界の国旗、札幌冬季オリンピックなどのシリーズものだ。

王冠 さて、次にこの大量のハズレ王冠をどうするか。私たちは王冠を裏返しにして、靴の底で道路に踏ん付けて、そのまま足をひきずって歩いた。こうすると摩擦熱で王冠がすり減り、だんだん表面がこすれてきて、最後には周りのフチと表面の金属が離れ離れになってしまう。だからなんなんだ? といわれると返す言葉もない。そういうものなのだ。摩擦した王冠は途中でつまみあげ、出来具合をチェックするのだが、かなり熱くてやけどしそうだった。

 それから、コカコーラなどの空き缶が落ちていると、それを真上から踏み潰し、運動靴に、折れ曲がった缶を両側から包み込むようにくっつけて歩くという遊びもある。ガチャンガチャンとロボットが歩いているような、すごい音がする。途中で缶が足から外れたら「負け」。……だからなんなんでしょうね。
 それから、昔の缶ジュースは今のように開け口の金具が下に下がるものではなくて、全部とれてしまうプルトップだった。この金具を二つに分解して、切り込みにベロの部分を差し込み、バネのようにして飛ばすという遊びをした。……ううむ絵がないと意味がわからないな。どっちが遠くへ飛ばすことができるか競争するのだ。缶関係ではキリで穴を開けて、プルタブを開けずに中身を飲むという遊びもした。
 これも何がオモシロかったかは分からない。子どもというのはなんでも工夫して遊ぶものなのだ。

「毎日小学生新聞」を改稿


2003年5月16日更新
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