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ママレンジ

協力:財団法人 日本玩具資料館

串間努

第5回「ママレンジ」の巻


「ママレンジ」広告●ホットケーキとママレンジ

 宮脇康之のケンちゃんシリーズのひとつ「ケーキ屋ケンちゃん」の歌によって、ボクは「シュークリーム」は「フタですくって食べるんだ」ということを知った(主題歌知らないヒトにはピンときませんね、すいません)。ボクがたまに食べていたシュークリームはカスタードクリームを注入した機械生産のものだから、固い皮でできたフタつきの洋菓子シュークリームなんて見たこともなかった。だからいまだに白い生クリームのシュークリームを食べると、あまり美味しいとは感じられない。黄色いカスタードクリームでないとシュークリームではないような気がするのである。高校生のころに、「どんなヒトが好み? ウフッ」なんて女の子に聞かれたときはいつも、「シュークリームを手作りしてくれる子」と答えていた。実際に作ってくれたのは一人だけ。皮はふくらんでいなかったが望みが達成できて嬉しかった。

森永ホットケーキミックス で、昭和40年代の子どもが一番喜ぶ現実的なおやつ、それはホットケーキだった。テレビでは「さあさ、みんなでホットケーキ、森永ホット、ホット、ホットケーキ!」と宣伝していたし、当時はホットケーキの素を発売しているメーカーが6社もあった。今は日清と森永と永谷園くらいではないか。

 『メープルシロップ』という、カエデの樹からとれる砂糖液だって、粉末になって付いている本格派だった。のちに「アメリカンドッグ」が、串刺しソーセージにホットケーキの粉をまぶして揚げるとできることを知ったときは驚いた。

 デパートの食堂や喫茶店でしか食べられなかったホットケーキ。

 家庭で手軽に食べられるようになったのは、ホットケーキの素のおかげだ。最初に発売したのはホーム食品という日本の会社で、昭和6年に、砂糖無しのもの(蒸しパンや饅頭にも利用するため)を出した。「ホットケーキ」と名付けたのもここの社長さんだ。アメリカでは同じものを「パンケーキ」と呼ぶけれど、日本にはすでに「パン」があったので、これと区別するため、温かいうちに食べることから「ホットケーキ」にしたという。いちおう言っておくけど、パンケーキの「パン」は食パンのパンのほうでなくフライパンのほうだろう。
「ママレンジ」

協力:財団法人 日本玩具資料館

森永ホットケーキミックス そしてホットケーキを「自分で焼きたい」という子どもたちの希望にこたえて登場したのが、昭和44年の「ママレンジ」という玩具だ。2500円のオモチャなんだけど、ホントにホットケーキが焼けるらしい。といっても直径5センチくらいの小さなモノだけど。もちろん、森永ホットケーキミックスとメープルシロップも付いていた。「マーマレンジ、ママレンジ、エプロン付けてクッキング、アサヒ玩具のママレンジ♪」というCMが、アニメ番組の後にいつも流れていたのをおぼえていた。発売から1年で17万個も売り上げたヒット玩具。

 焼けるということは、やけどなどの危険もありそうだ。でもそこはちゃんと安全を考えて、フライパンを乗せると自動的にスイッチが入り、はずせば、電源が切れるようになっていた。それに、焼く部分はニクロム線の上を雲母の板でカバーしてあるから、熱に直接手をふれる恐れはない。昭和44年の毎日小学生新聞でも、優良玩具としてすいせんされていたほどだ。

「ママスイート」広告 このママレンジが大ヒットしたので、第2弾としてポップコーンが作れる「ママポッピー」が発売され、続いて、綿菓子ができる「ママスイート」もでた。これらは「クッキングトイ」というシリーズとしてウケ、のちには「ママポット」や「ママシャワー」、「ママ流し」というのも出て、家の中にあるいろいろな製品がミニチュア化していった。

 今は使い捨てカメラや、CDプレーヤーが簡単に手にはいる時代だけど、その頃の子どもにとっては、大人が使うモノはあこがれだった。ボクらは学習雑誌の付録の日光カメラや、幻燈機、レコードプレーヤーにワクワクした。例え、焼けたホットケーキが生焼けでもいい(なかなかうまく成功しないのだ)。ボクらはホットケーキという成果を手に入れたかったのではなく、お母さんのように料理したいという「夢」を実現したかっただけだから。それで満足だったのだ。

●「毎日小学生新聞」を改稿

「ママポッピー」広告

2003年2月21日更新
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