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嗚呼、廃線の旅──名古屋鉄道・美濃町線
『昭和を“快”走したチンチン電車』

ドラ党歴43年 長良川龍一

名鉄・新岐阜駅に鎮座する美濃町線車両

   知る人ぞ知る名鉄(名古屋鉄道)は、名古屋近郊を縦横無尽に走る交通の大動脈である。首都圏や関西圏と違い、JR東海や名古屋市営地下鉄はあるものの、競合する私鉄がないので独占状態──悪く言えば“殿様商売”をやっとる。これは、中京地区では誰も逆らえん中日新聞と同じだ。愛知県に本拠を置くトヨタは既に<世界のTOYOTA>になっとるので、名鉄や中日新聞ほどケツの穴が小さくない!?

    で、私の実家は岐阜市芥見(あくたみ)という、“チンチン電車”美濃町(みのまち)線が走ったのどかな郊外にある。最寄り駅「上芥見」駅はプラットホームらしきものがなく、軌道面より20cmぐらい高いコンクリートの段差があるだけ。道路の対向に申し訳程度の雨宿り用スペース(単なる自転車置き場だ)があり、まさにレトロ感覚満点の趣なのだ。



これが噂のプラットホームと駅舎(笑)。もちろんドラゴンズは欠かせん!

   名鉄「新名古屋」駅(今は「名鉄名古屋」)から特急パノラマカーで20分、「新岐阜」駅(今は「名鉄岐阜」)に着き、そこで美濃町線に乗り換える。この美濃町線、車高が高く、強風にあおられると横倒しになりそうな車両で、軌道上ではまっすぐ走っとるのに、なぜか横揺れが激しくて、三半規管の弱い子どもはすぐに酔ってしまう。事実、ウチの子どもも乗ってすぐに顔が真っ青になったことがたびたびだ(笑)。


名古屋圏の子どもの憧れ「パノラマカー」と展望席からの眺め

   クルマと共存して道路の真ん中を走る区間は、当然のことながら交通ルールにのっとって赤信号で停まり、青信号で進む。図体がでかい分、加速が遅いのでいつも傍らを走るクルマに抜かされっぱなしだ。
   帰省するとき、名古屋まで新幹線のぞみ、名古屋から新岐阜まで特急で飛ばしてきた子どもたちにとっては「お父さん、電車のくせに遅いね、こいつ!」と少々ご不満の様子だ……。

右の写真のように廃線前には新型車両も投入されたのだが……。

   クルマと共存する道路上の軌道を抜けると、あとは“徹夜踊りの町”として有名な郡上八幡へ向かう国道156号線に沿って田園風景の中を走る。しかし電車専用の軌道になっても、速度は相変わらずクルマといい勝負だ。

国道から離れて専用軌道を悠々と走る

   「新岐阜」から終点の「新関(しんせき)」駅まではたった30キロ弱の距離だが、駅も20数駅あるので駅間はせいぜい数百メートルから2キロぐらいか。ふつうに考えればすぐに次の駅に着きそうなもんだが、いかんせん何度も言うように速度が遅い(最高速度40km/hとか……)。
   おまけに単線ゆえの宿命で、対向電車との待ち時間があるので、「新岐阜」から「上芥見」までたいした距離があるわけでもないにクルマの2倍近く、正味40分かかるのだ。


国運行同様、のどかな車内と運転席。まるでレトロ博物館のよう

   国道を走る岐阜バスは速度も便数も美濃町線より優位に立っており、通勤通学客がバスに流れて乗降客の減少に歯止めがかからなくなった。
   “電車の足”を必要としている地元民や鉄道マニアの声援もむなしく、2005年4月1日に“企業の論理”で、岐阜市内線を含む全線が廃止された(岐阜市も見て見ぬフリやった……)。


共存共栄策もむなしく、ついに廃線……

   嗚呼、懐かしの名鉄美濃町線──発車するときの“チンチン”という合図が、今も耳にこだまするでかんわ。


廃線後はしばらく子どもの遊び場となり(立ち入り禁止です!)
いつしか線路も撤去された


2009年12月1日更新


昭和を“快”走したチンチン電車

昭和49(1974)年秋、ドラゴンズ20年ぶりの優勝!