イラスト・もりたあゆむ
レ ト ロ ス ポ ッ ト ガ イ ド 「 ま ぼ ろ し 酒 場 」
いたまえ料理いなとり
ハッキリ言って葛飾区立石は、東京の田舎である。町には高層ビルもなく、駅前はバスターミナルどころかバルコニーもない。だが逆にそんな点が、この町を訪れる者の心を和ませる。
いなとりは、商店街のはずれにあり目立たない店だ。店も綺麗ではない。だが新鮮な食材を、ふんだんに使っているから旨い。そして安価なのが嬉しい。刺身はその回の仕入れによって替わるが、何を頼んでもいける。常連客に人気なのがえび団子だ。俺はエビ、カニが嫌いだから食べないが…
その替わりに俺が必ず頼むのが、いわしのつみれである。揚げても、汁にしても旨い。
初夏ならカツオの土佐造りが絶品だ。これで冷酒や、ぬる燗を飲んだらサイコーだ。酒は通常、菊正宗だ。それ以外に全国の地酒が豊富に揃っている。欲を言えば、これらの一升瓶を冷やしてくれたら尚良いのだが。
「中洲通信」で長く編集長を勤めた、伍東道生が立石を語ったことがある。
<酒は旨いし、ネエちゃんはきれいだ>
こんな内容であった。ネエちゃんの方はあまり、当てにならないが酒の方、居酒屋は大変に多い町である。そして金貸し(銀行、信金)も多いのが立石である。
話は横道にそれたが、地元の住人以外にも人気なのがいなとりだ。平日は予約をしないと席がない。主が料理を作り、かみさんが配膳する。二人で切り盛りしているので、楽しむコツは、一回目にまとめて料理をオーダーした方が良いだろう。小きざみでは、混んで来るといつ出来るか判らない。この店の隣は、チャンピオン作りに定評のある宮田ボクシングジムだ。ジムの練習風景を覗くのも悪くない。たまにはジムの若い衆が、ジョッキを傾けている姿も見られる。将来の日本チャンピオンと、同席するのも思い出になるだろう。
■住所 葛飾区立石7-7-11 ■電話番号 03-3696-5734
文:坂口団吾
2004年6月17日更新
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