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田端宏章

第17回 タバコの王様ピース美術館 その2 (お役所系 篇)


タバコの王様ピース さて、前回に引き続き、タバコ界の王様と呼ぶにふさわしいピースの、記念物バージョンのコレクションをご紹介しております。記念物に限らず、本家のピースもセンスの良いことで知られています。アメリカの工業デザイナー、レイモンド・ローウィーがデザインしたことで知られる鳩のパッケージですが、このパッケージに改装する前は26億本だった売り上げは改装後にうなぎのぼりの93億本となり、翌年には150億本にまでなったそうです。いかにパッケージデザインというものが重要かということを証明した出来事ですね。ちなみにギャラは150万円、当時の総理大臣の月給が11万円の時代にです。しかし、この売り上げの伸びには政府も大喜びで、充分すぎるほど元をとったことでしょう。
 では、今回もすばらしいデザインの記念物ピースをご紹介いたします。


「文化財保護法施行15周年記念」(1965年発売)

「文化財保護法施行15周年記念」文化財保護法が施行されたのは1950年(昭和25年)5月30日のことです。この法律は、文化財の保存等を目的に制定されたものです。文化財とは、建造物、絵画、音楽など芸術上の価値が高い有形文化財、無形文化財、風俗慣習等の民族文化財、古墳、遺跡等の記念物及び歴史的風致を形成している伝統的建造物群を言います。そして、遺跡の発掘に際しての手続きや、遺跡のある場所での開発に対する処置が定められています。たとえば、遺跡が自分の所有地であっても、勝手に発掘をしてはいけませんし、遺跡への対応を全くしないで、土地の開発を行なうことも禁じられています。なお、出土した土器や石器などの遺物については、『遺失物法』の規定に基づき、落とし主の分からない遺失物として扱われ、誰の土地から出たものでも、まずは国が所有することになります。使用された図版は有名な埴輪(はにわ)の「踊る人々」。埼玉県江南町野原から出土いた物で、古墳時代(6世紀)に作られたそうです。 この愛らしい埴輪は、東京国立博物館に保存されています。


「塩専売60年記念」(1964年発売)

「塩専売60年記念」塩の専売制度は、1905年(明治38年)に財政収入の確保と国内塩業の保護育成を目的に創設されました。そして第1次世界大戦後の経済情勢の変化等にともない、1919年(大正8年)以降は塩の円滑な需給、価格の安定、国内塩業の保護育成を目的とする公益専売となりました。その後、1948年(昭和23年)に日本専売公社法が制定され、塩の製造や販売は国に代行して日本専売公社(翌年設立)が行うようになり、さらに、1985年(昭和60年)専売公社に代わって設立された、日本たばこ産業株式会社(JT)の塩専売事業本部が専売業務を引き継いでいました。塩専売法に基づき90年以上にわたって続いてきた塩の専売制度は、政府の規制緩和の方針を受けて廃止され、1997年(平成9年)4月1日から新たに塩事業法が施行され新制度になりました。新制度では、製造、輸入、卸売は登録・届出制となり、小売については届出・登録をしなくてもよくなりました。塩の結晶をデザインした美しいパッケージは、記念物ピース界屈指の名作です。下部には塩の元素記号もあります。地にひかれた水色と塩の結晶の黒い影が美しく画面を構成しています。


「優秀国産品認識週間記念」(1964年発売)

「優秀国産品認識週間記念」裏には「良いから買います国産品」と書かれています。日本をあらわす日の丸のデザインに、積まれた箱を表現した棒グラフのような絵を重ねています。さらに商品らしき棒には「MADE IN JAPAN」の文字があしらわれています。1964年といえば、東京オリンピックの行われた年。世界中から注目を集めている今だらかこそ日本国製品をアピールしよう!という狙いがあたようです。このパッケージだけでは、どこのクライアントが作らせたピースなのかははっきりしません。


「東京−全県庁所在地 ダイヤル通話完成記念」(1965年発売)

「ダイヤル通話完成記念」1965年(昭和40年)、東京と全国道府県庁所在地相互間のダイヤル市外通話が開始されました。日本の電話の歴史は古く、1877年(明治10年)にベル電話機がアメリカから輸入され、1878年(明治11年)には初の国産電話機が制作されました。その後も、1934年(昭和9年)には最初の国際電話が東京−マニラ間で開通 し、1951年(昭和26年)にはボックス公衆電話の全自動化が完了、1952年(昭和27年)年にはそれまでの電気通信省が廃止となり、日本電信電話公社が発足しました(今のNTTの前身ですね)。そんな記念ピースには手回しダイヤルが中央に配され 、青と赤の色彩を使った美しい画面が構成されています。バックには矢印のような記号がデザインされています。


「納税貯蓄組合結成十周年記念」(1961年発売)

「納税貯蓄組合結成十周年記念」記念物ピースは、このような行政に関わる「お役所っぽい」ものが多いのですが、記念の内容に比べてデザインが良いのが面白いところです。納税貯蓄組合は、税金を容易かつ確実に納付するため、一定の地域又は勤務先を単位として組織される組合です。納税貯蓄組合法が施行されたのは、1951年(昭和26年)のこと。納税貯蓄を表現するために小銭を掴んだ手が二つデザインされています。分かりやすい絵ですね。一つは白抜き、もう一つは赤の特色で刷られています。ピースの文字は金色で、もしかするとお金を表現しているのかも知れません。手はそれぞれ点描イラストで表現されています。


 というわけで、今回はお役所がらみの記念物ピースを特集しました。お役所もこの頃はセンスのいいものを作っていたんですね。こうした記念にピース(たばこ)を作っちゃうというところに、今のヒステリックな嫌煙ブームにはない「文化的ゆとりのある時代」を感じる今日この頃です。次回は乗り物をデザインした記念物ピースをご紹介します!

(たばた ひろあき 平和煙草蒐集家)


2003年5月12日更新
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