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「ら〜めん路漫避行」タイトル

第28回 さよなら人類たまテック〜
〜先天よい子は家族の肖像
刈部山本

09年9月一杯で閉園してしまう多摩テック。居てもたってもいられず、9月上旬に行ってきた。

日本の遊園地はご存知の通り千葉の鼠屋敷が一人勝ち状態で、アチコチの趣き深い遊園地が画一的な娯楽の強要に押し潰されている。自分の子供の頃の遊園地というのはデパートの屋上遊園のチョイと豪華版といった趣で、家族でお弁当を持って極彩色のコーヒーカップやゴーカートに乗って夕暮れには帰路に着くという、本当にささやかな、どこにでもある普通の家庭のなんでもない休日の1コマに過ぎなかった。
デパートに行くのが特別だったあの頃、そんなちょっとした1日がなんとも贅沢で特別な出来事となった。1日じゃ回れないほどの敷地に数時間の行列、見た目豪華だけどハリボテの城やホテルにン万円払わないと、子供の幸せはいつからダメになったのか。
そんなこんなを確認するためにも、なんか、行かなきゃいけない気がしたのだ。

とその前に腹ごしらえ。というわけで、行きは新宿から京王線でということになり、国領で途中下車。ここには駅前で行列を作っているラーメン店があったのだ。10年以上来てないので思わず足が止まった。
熊王外観

熊王
12:00〜翌1:00
火曜休
東京都調布市国領町4-9-16

以前は昼ピークともなると長蛇の列だったが、平日の昼過ぎだからだろうか、並びはなかった。店内は如何にも昭和からやってますって感じの、何らの飾り気もない店内で供されるは塩・醤油・味噌のラーメンに各種トッピングのみ。 醤油ラーメン麺カタニンニクは600円。以前は500円でずーっとやっていたかと思ったが、かなり大きめの丼でこの内容なら十分安い。

醤油@熊王

擦ったニンニクが結構入ってるようで、飲むと味も香りもニンニクに支配され、元のスープの味がわかんないのだが、このなんだかわかんない味がなんともハマる。単にニンニクだけの味とは思えない味わいから、元がそれなりにしっかりしたスープなのだろうことは想像できる。
チャーシューの切り落としは噛むと肉の甘みと下味の濃い味が合わさって食べ応えすら感じる。青ネギは苦いのだが、表面のラードが多めなので、最後までクドさを感じさせない役割があるようだ。
久々の味だったが今でも十分に満足度を与えてくれる、変哲もない醤油ラーメンに見えて、ココならではの味として完成されている気がしてきた。

再び京王線に揺られ高幡不動で多摩動物園行きの動物園線に乗り換え。一駅だけの線なのに数両連なっている。生活路線になっているのか、平日昼過ぎでもそこそこ乗っている。
多摩動物園駅前には京王線のショップ「京王れーるランド」があったが、送迎バスの時間の関係で泣く泣く立ち寄りを諦める。
小さなバスに揺られ、動物園や遊園地脇を多摩都市モノレールの下を縫うように通るのはいくつになってもテンションが上がる。あっという間に多摩テック前に到着。

多摩テック入口

同乗の年配カップルはもとより家族連れも温泉目当てのようで、下車したのは自分ひとり。寂しくゲートを潜る。閉園時間まで1時間少ししかないのでフリーパスではなく入場料のみにした。
様々の色鮮やかな乗り物が園内を動き回っている。

今の乗り物

閉園に関するメモリアルコーナーが特設され、歴代のカートなども展示されていたが、まずは開園当時の様子や昔のアトラクションを上映するというメモリアルシアターに向かった。そもそも多摩テックは1961年の開業当初、モトクロスのコース的な意味合いだったようだが、まだ自動車の普及も半ばといった時代に、自ら操る楽しさを多くの人に感じてもらうために「ゆうえんちモートピア」構想を立ち上げ、子供も楽しめるアトラクションが増え、今の形になったという。時代時代で乗り物が様変わりし、昭和40〜50年代は極彩色の昆虫を模したような乗り物が宙を進んでいたりと、自分が子供の頃によく乗った、なんだか知らないが異常に楽しく興奮した類の乗り物たちの姿があった。

昔の乗り物UP

その後絶叫タイプのマシンが増えたりもしたが、基本変わらないのが、ガソリンエンジンを積んだ乗り物を振動で体感し繰る喜びを感じる、という思想だ。どんな低速のものでも基本ガソリンエンジンなのだそうだ。今の時代には少々不釣合いかもしれないが、あの音と振動は他に変えがたいものがあり、それが憧れだった時代の鼓動が辛うじて残っている施設なのかもしれない。

メモリアルストリートには多摩テックで撮った昔の写真が年代別に展示されていた。
※写真は一般公開を前提に応募されたものですが、一応顔はぼかしておきます。

メモリアルストリート

これは一般募集したもので、当時の家族の当たり前の休日の情景が映し出されていた。これぞ自分の知る家族の姿、というものが時代を超えて幾重にも連なっていた。

昔の乗り物と家族

お父さんはキバったジャケット着て髪に油なんかつけてて、お母さんはすまし顔で・・・さっきのメモリアル上映もそうだったが、見てて目頭が熱くなってくる。思い出しても涙が出てくる。もうダメですわ。

家族の肖像1

家族の肖像2

家族の肖像3

居てもたってもいられず、ゴーカート「ドリームR」にだけ乗った。園内をズガーッとエンジンの鼓動を感じながら走った。子供の頃もそうだったが、今になってもこういう乗り物って乗る前から異様に緊張してしまう。

フローズン

その後はフローズンドリンクを飲んで一息。如何にも着色しましたってハワイアンブルーが眩しい。アメリカンドックが売り切れだったのが残念だが、家族連れを眺めながらのこのユルユルとした時間がたまらず、また閉園時間間際の、人がどんどん少なくなっていく遊園地独特の寂しさが身にしみる。

さて、そんな身をあっためるとしようか。併設している温泉へGO!
クアガーデン外観

多摩テック 天然温泉クアガーデン【09.9月末閉館】
10:00〜22:00(受付21時)
東京都日野市程久保5-22-1
公式HP

遊園地とは独立したつくりで温泉だけの利用も可能だが、遊園地からも入れる。緑の小道を抜けると明るくポップな入口がお出迎え。

クアガーデン入口

入口脇の下足ロッカーへ。こちらはなんだか市営プールのようなスチールロッカーだが、脱衣場のロッカーは細長いが狭すぎず、まだ真新しい感じ。この辺は高級スーパー銭湯の雰囲気。
内風呂は横長の広〜いもので、温泉が使われ、大きなガラスの向こうに多摩の郊外風景が一望できる。まぁ露でやや曇っちゃってるんだけど、見晴らしはいい。
面白いのはジェット系の専用浴槽がないこと。サウナも高温サウナひとつだけ。露天はといってみると、メインは大きな岩風呂だけ。スーパー銭湯としては物足りないが、この潔さは気持ちいいほど。温泉自体は黄色みがかった透明なもので、結構しょっぱさがあり、なかなかあったまる。
露天からの眺望というのがウリのようだが、生垣が高く、立っていないと温泉に漬かってからでは望めない。しかしこれだけ広い空の下露天風呂に浸かれる機会もそうないので、温度もぬるめだし実に気持ちいい。
館内着に着替え2Fへ。いろんなレストランが並ぶ他に、リクライニングチェアが並ぶスペースがある。カフェが隣接され、一応ドリンクオーダーが必要なようだ。席に着くとファミレスによくある呼出キンコンがある。
正面の大きなガラス窓から多摩テックの緑が広がる。実に気分がいい。持ち込んだ文庫本を読み読み、うとうとし始めたら入館から時間近く。〆に再び露天に浸かり、高幡不動行きの送迎バスに乗り込んだ。

バスは急な坂を下り、モノレール脇の道を走る。もうこのバスに乗ることはないと思うと、初訪問ながら寂しさが込み上げてくる。やはり昭和生まれの自分にはこうした等身大の遊園地がぴったりとくるし、時代に合わせたクアハウスも今の自分には極上の施設だ。
こういう施設は無くなる一方だが、あるうちに一つでも多く体感しておこうと思う。これからその都度、こうしてレポートをあげていきたい。
ともあれ多摩テック、素晴らしいの一言であった。



刈部山本

刈部山本(かりべ・やまもと)とは・・・
ラーメンなどのB級グルメを主食とし赤線跡・軍事遺跡・レトロ建築等を巡る路地裏徘徊人。
東京の下町、谷根千の路地裏でカッフェーを自営。スペシャルティ珈琲・想いやり生乳・自家製ケーキで持て成す。サブカル・町歩き等の古本・ミニコミが並ぶ一角も。
結構人ミルクホールHP http://kekkojin.heya.jp/




2009年 9月 25日更新


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