今柊二
「未来少年コナンとガレージキットその2」
で、前回の続きで「ギガント」である。「未来少年コナン」は、「ヤマト」やこの後にやってくる「ガンダム」などと同様に、一回ごとで完結するタイプの話ではなく、物語は連続している。そして前回にも記したように、物語は最後になってすさまじく盛り上がる。というのも、それまで息をひそめていた(少なくともそういうふうに見える)メカや仕組みがズキズキと動きはじめるからである。
三角塔のてっぺんが、機能がよみがえったとたん、光の集積装置となり、太陽エネルギー集光衛星から送られてくるエネルギーを吸収するすがたを見たときは、本当にテレビに向かって「ああ!」と叫んでしまったものである。
さらには、三角塔そばの工場街が割れて、ギガントが徐々に上昇していく姿は、本当に重そうで、かつ「リアル」だった。これは「ヤマト」が干からびた海から発進する姿とガンダムが最初にアムロが起動させた時と同じような感動だった。いや、「ギガント」の場合は、物語の最後でようやく飛び立ったために感動もひとしおだったのかも知れない。
「また会えたね!」(アニメージュ文庫・コナンの本)によると、「コナン」放映時の視聴率は、「ギガント」が壊される二五話の14%が最高だったという。この本の最後の宮崎駿の談話でインタビュアーがいったとおり、最初から「ギガント」が飛んでいれば視聴率も違ったかも知れないが、後になって飛んだからこそ、「コナン」の物語としての価値が高まったとも言える。
さて、このギガント、実にメカとしても素晴らしい。形態が蛾のように奇怪なものもいい。色がアニメの原色ではなく、ちゃんと軍事ぽくグレーなのもいい。そして武器がいっぱいついているのもいい。旅客機のように内部が客室になっているのではなく、中央部と各部位がパイプで移動できるようになっているのもいい。
後にアカデミイの1/72スケールのB29のプラモデルをつくったときに、「ギガント」と「B29」の構造がよく似ているのでびっくりしたことがあった。ちなみにB29はコクピットなどが与圧システムとなっていたため、高高度飛行が可能となった機体で、敵ながらメカとしても実にスゴイ機体だ。
そして、この「ギガント」をコナンたちが次々と破壊していくわけだが、トカゲのように次々と機体を切りはなしていける仕組みも感動モノだった。そして、この「ギガント」を見終わったあと、たぶん全国でこの「コナン」を見ていたファンの80%以上の男子諸君は「このギガントのプラモデルが欲しい!」と思ったはずである。
しかしだ。この「コナン」もテレビ放映時にはぱっとしなかったが、後に映画になったりとブレイクしたものの、ヤマトやガンダムのようにプラモ化の道はあまり進化しなかった。
わずかにバンダイから「ファルコ」「ロボノイド」「パラクーダ号」と4つセットになった「ギガント」が500円で発売されたことがあったが、これはいわゆる「100円プラモ」で、失礼ながらとてもバンダイの仕事と思えないような簡素(いや、もっと言えば貧相)なキットであった。
あのですね! 我々はですね! もっともっとリアルな「ギガント」のプラモデルが欲しいんですよ! ちゃんと機銃とかもついてて分離機能もあるようなやつね!
食玩やガシャポンでも「コナン」はときどき出てくるけど、ほとんどがキャラクターフィギュアものばかり……(泣)。頼むからバンダイあたりが「MGギガント」(注)とか出してくれないかなあ。
さて、このように思った人々のなかには「市販されているプラモデルでないのなら、自分達でつくってしまえ」と考える人たちがいた。そういう人たちがガレージキットという自分達でつくる少数生産のプラモデルの文明を勃興させることになるのだが、1980年代はじめころに、この宮崎アニメのガレージキットに強さを発揮していたのが、今をときめく「海洋堂」であったのだった。
MG…マスターグレード。現在のガンプラでは1/144がHG(ハイグレード)、1/100がMG(マスターグレード)、1/60PG(パーフェクトグレード)という設定になっており、グレードが高くなるほど、ギミックが上昇し、内部メカもぎっしりつくるキットとなる。値段も全然違い、HGは700円〜、MGは2500円〜、PGは12000円〜。ギガントなら5000円でもいい。
2002年12月18日更新
ご意見・ご感想は webmaster@maboroshi-ch.com
まで
「未来少年コナンとガレージキット」
「銀河鉄道999と鉄道プラモデルと永遠の命」
「銀河鉄道999と鉄道プラモデル」
「ビッグワンガム、進化する!」
「素晴らしいビッグワンガム」
「100円ヤマトとビッグワンガムその1」
「宇宙戦艦ヤマトとウオーターラインシリーズその3」
「宇宙戦艦ヤマトとウオーターラインシリーズその2」
「宇宙戦艦ヤマトとウオーターラインシリーズその1」
「続・マジンガーZの呪い」
「マジンガーZの呪い」
→
|