さえきあすか
その11 麦わらの鍋敷きの巻
冷蔵庫を買うことにしました。
東京は秋葉原、世界一の電気街へいざ出陣。いかに安くてステキな冷蔵庫を見つけるか。これが今の最大の目標です。でも、数ヶ月前にFAX用紙を秋葉原に買いにいった時は、入るお店、入るお店、どこにも置いていなくて、たかだかFAX用紙を買うだけなのに閉口したことがありました。最初から家電を取り扱うお店にいけばよかったのですが、どこの電気屋さんにも当然置いてあるものだと思っていた上に、あまり縁のない場所なので、なかなか見つけることができなかったのです。最近の電気製品って、中心は家電ではなく、パソコン関係やゲーム類なのですね。しかし、今回は大丈夫。お店の前に家電が並んでいるところにいけばいいんです。
JR秋葉原駅の電気街口をでると、コマーシャルでもおなじみの「サトームセン」に入りました。冷蔵庫を眺めていると、TVで奥様に人気がある、みのもんたさんに似た感じの男性が真横にやってきて、ハスキーな声と細めた目で、
「何、探しているの?」とひと言。
「冷蔵庫」
「どんな?」
「黄色いやつ」
「あるよ。去年の型で店頭には並んでないけどね。カタログ見る?」
「見る」
パッと取り出したカタログには、真っ黄色の冷蔵庫が載っていました。実は台所は黄色、オレンジ色で統一しようと考えていた私にとって、この色はまさに理想の色です。
「メーカーどこですか?」
「東芝」
「買います」
結局、秋葉原駅を下車して五分と経たないうちに、冷蔵庫を買ってしまったのでした。型遅れということもあってお値段も安くしてくださり、冷蔵庫ってパソコンと比べるとメチャメチャ安いのですね。大きい物なのに(大きさの問題ではないか)。
以前暮らしていた台所は、モノが多くてせまかったので家事はしていませんでした。けれど新しい生活をはじめた私の目標は家事(目標を掲げることが好きな私であります)。新しい黄色い冷蔵庫に誓います。
「ちゃんと食材を入れるからね。よろしくね」
そういえば、私が冷蔵庫を買うといったら、会社の上司は、
「さえきちゃんは、氷を入れて冷やす昔の木製冷蔵庫が似合うわよ」といいました。時々骨董市でも見かけますが、カッコよくてステキな代物です。
「氷を入れて使う時間の余裕はないよ。だいたい氷屋さんなんて近所にない!」と即答したのですが、冷蔵庫ってありがたいですね。いざなくなってみると本当に不便です。特に夏場は‥‥。お風呂と同様に(その9 カール点滅器の巻参照)8日間冷蔵庫のない生活をしたのですが、クーラーがない中で冷蔵庫までないのは、それはそれは、笑っちゃうくらい大変でした。しみじみ現代文明の進歩に感謝しました。
これからは古い食器も活躍することになります。自慢ではありませんが、家事はしなかったくせに食器はけっこう持っているのです。昔の食器もおもしろいですよ。ひとつひとつ集めていくと楽しいし、お皿から時代が垣間見れたりします。古いモノと新しい物を取り混ぜながら、楽しい生活を目指します。
そんな折、「鍋敷き」が入ったお手紙が届きました。以前からミニコミ誌など読んでくださっている、東京にお住まいの女性、Tさんからです。内容はこうです。私が書いた『ガラクタをちゃぶ台にのせて』(晶文社発行)の中に、いまだに戦前のモノが売られている雑貨屋さんにいき、とても感激したという記述があります。その中に「ビニールの鍋敷き」と書いたのですが、それは間違っていて、麦わら製であると店主の方にいわれ、最近その店を訪れたTさんが「麦わらの鍋敷き」をことづかって、わざわざ送ってくださったのです。
封筒の奥から、ふんわりふくらんだピンク色の「麦わらの鍋敷き」がでてきました。ところどころ色あせており、5個所に緑色で編み込んである、カラフルな鍋敷きです。確かに麦わらで編んでありました。直径11.5センチの小ぶりなサイズで、いつ頃つくられたモノでしょうか? 何十年かは経っているに違いありません。冷静に考えてみると、鍋敷きにビニールって使いませんよね。たいへん失礼しました。
平成8年の初秋に、懐かし博物館館長の入山喜良さんにつれていってもらった秘密の雑貨屋さん。忘れもしません。ひと昔前のお店にタイムスリップしてお買い物をした気分でした。ワクワクと大興奮した私たちは山のように雑貨類を購入したのですが、針金にカラフルなビニールを巻いてつくられたモノが多く、鍋敷きもビニールに見えてしまったのでした。どういうわけか鍋敷きは買いませんでした。鍋を使わなかったからかしら?
さて、家事をテーマとした私の新生活を祝福してくれるかのように、「麦わらの鍋敷き」がやってきました。実は「鍋敷きも買わなくちゃ」って思っていた矢先で、数日前に銀座のプランタンで、ベトナム製の物を見たばかり。どうしようかと悩んだ末、色で妥協できず、買うのをあきらめていたのです。なんだか非常にタイミグのよい不思議な出来事です。この鍋敷きが活躍するほどに鍋が活用できるよう、がんばります。秘密の雑貨屋さん、送ってくださったTさんに感謝です。
懐かし博物館のご案内
歯医者さんであるにもかかわらず、ひと昔前のお菓子のパッケージや玩具などが大好きな、入山喜良さんがつくられた個人博物館です。『おかしな駄菓子屋さん』(京都書院発行)の著者でもあります。個人博物館とはいっても、細かくきちんと整理され、美しくディスプレイされた室内は、物量ともに見応えがあります。常日頃小さな歯を相手に働いておられる入山さんだからこそ、ここまでできたのではないかと思います。予約制ですから、お電話で確認の上、ぜひ足を運んでみてくださいね。
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住所:神奈川県横浜市青葉区美しが丘3-6-6 電話:045-901-4582
お知らせ 『倉敷・懐かしマーケット』のご案内
来たる11月23日、勤労感謝の日。倉敷アイビースクエア内にて、『倉敷・懐かしマーケット』なる骨董市が開催されます。小雨決行。楽しくて、懐かしいモノがいっぱいです。
思い起こしてみると、1999年の11月に開催してから、早いもので第10回目となったそうです。主催者のひとりであるレヴューさんは、当時骨董市を開催するという、はじめての経験にとても緊張していたっけ。でも、骨董市は大きな都市だけのものじゃない。倉敷というステキな街で、手作りのあったかい、親しみやすい骨董市をつくりたい。そんな思いが10回まで続かせたのでしょう。継続は力なり、すごいですね。私もたいへんお世話になっている骨董屋さんで、出店しておられる方も親しい業者さんが多く、ぜひともこの日は行きたいなぁ。無理かなぁ。無理だとしても「読ガエル新聞」でもつくらせてもらおうかな。と考えているところです。
お近くの方はもちろんのこと、遠方の方は秋の倉敷、観光を兼ねて足を運んでみてください。モノになかなかお金を使わなくなったご時世ですが、何十年も生き残ってきたモノたちは、パワーをもっていて元気をくれますよ。手にとって楽しい時をお過ごしください。
日時:11月23日(土) AM 10:00〜PM 5:00
場所:岡山県倉敷市本町7-2 倉敷アイビースクエア内
問い合せ先:TEL086-426-5525
2002年10月30日更新
ご意見・ご感想は webmaster@maboroshi-ch.com
まで
その10 お相撲貯金箱の巻
その9 カール点滅器の巻
その8 ピンク色のお面の巻 後編
その7 ピンク色のお面の巻 前編
その6 ベティちゃんの巻
その5 うさぎの筆筒の巻
その4 衛生優美・リリスマスクの巻
その3 自転車の銘板「進出」の巻
その2 忠犬ハチ公クレヨンの巻
その1 野球蚊取線香の巻
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