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日曜研究家串間努

第11回「仮面ライダー変身ベルト」の巻

変身ベルト



 鉄腕アトムといえばシールだったころ、鉄人はワッペンだった。サンダーバードはプラモデルで、ウルトラマンはソフビだ。
 そして、仮面ライダーといえば変身ベルト。フンフンフン。イエーイ。

変身ベルト 「仮面ライダー変身ベルト」は1971年にポピーという玩具会社が発売して流行した。玩具とテレビと雑誌のコラボレーショーンの先がけとして、「変身!」のセリフとともに現れたのであった。相当売れたらしいが、僕は買ってもらったことがなく、友人のをたまーに1分間くらい貸してもらうのがせいぜいで、あとは、二重に穴が帯状に並んでいるウエスタンベルトを2つ折りにして「パチン! パチン!」と破裂音を出して遊んでいるのがせいぜいであった。

 「光る!まわる!仮面ライダー変身ベルト」を腰につければ、どんな子どもだって仮面ライダーの気分を味わえたものだ。俳優としてやっていた本郷猛役の藤岡さんは大人だったから、マジだったとは思えない。それなら当時、一番楽しく仮面ライダー気分を満喫していたのは、現実と虚構の区別がつかない、変身ベルトを巻いたガキどもではなかったか。

変身ベルト その証拠に崖から飛び降りたり、敵のショッカー役の友達に本気でライダーキックを浴びせたり。どいつもこいつも本当は人間のガキなので怪我をしてしまう。そのため、番組の最後に毎回、「よい子のみんなは真似しないでね」という注意が流れ、それがエクスキューズになって、番組は続けられたが、このフレーズがどのくらい抑止力を持っていたのか、効果のほどは怪しい。いまやギャグとしても独り立ちしはじめていることからも、「よい子」なんてどこにもいなかったことを物語っているではないか。あ、それはいってはいけないお約束か。

 変身ベルトは、大ヒットしたため、そのあとも東映系の特撮ヒーローキャラに応用された。キカイダーなどでもでたというが、彼はベルトしていたっけな?
変身ベルト とにかく自転車とベルトさえあれば仮面ライダーごっこは成立した。のちには仮面もプラスチックだかFRPだかの素材でヘルメット様のものが発売されたし、2本線が入ったジャージを着て、白い長靴をはけば完璧に扮装できる。
 鞍馬天狗や月光仮面の昔から、風呂敷などを使って、ヒーローの格好を真似る文化はあったが、高度成長時代の昭和40年代には、より子どもはリアルになって、コスプレ感覚を楽しんでいくようになったのである。

変身ベルト

 ウルトラマンはどうしても「シュワッチ」や、スペシウム光線の型をとらないと判然としなかったが、このようなあいまいな怪獣ごっこと違い、仮面ライダーごっこは、ベルトというものの存在で正義と悪がわかりやすい。それまでも、アニメ「シンドバッドの冒険」でのマジックベルトとか、菓子メーカーのシスコがチョコの景品で出した「赤影忍者ベルト」などがあったが、これらは武器であったり、武器ツールをぶら下げておく、機能的なベルトであった。仮面ライダーのそれは、風を受けてエネルギー源となり、人間が仮面ライダーになるために必要ないわば「象徴」的存在であった。王者のしるしとしての、力道山のチャンピオンベルトにどちらかといえば近いか。

変身ベルト

 しかもこのベルトは画面のなかのものと同じように動いたり、光ったりする。初めて、友人が買ったベルトのスイッチを押したときの感動といったら! 昭和30年代に登場したトランシーバーやスロットレーシング以降は、電池をつかった玩具というのは、とてつもない価値があったものだ。
 この感覚は、生まれながらにファミコンがあった世代には理解できないかもしれない。
 玩具の進化の歴史は子どもにとって「驚き」の歴史であった。初めて、モーターライズで動くプラモデルをみたときにはビックリしたし、テレビゲームが現れたときもコンピューターと対戦できるモードにショックを受けた。そのうち、テレビゲームは自動的に自分が操作する主人公以外が動いたり戦闘をするようになり、そのことが更にビックリを加速させた。

変身ベルト およそテレビゲーム的なものが好きだった昭和50年代の中高生というのは、インドア少年であり、一人っ子が多かった。戦争をテーマにしたボードゲーム(アバロンヒルウォーゲームなど)をやるにも手間だったのが、頭を切り替えて一人で敵と味方の両国のコマを動かしたり、作戦を練らなければならないことだ。ひとつ、ひとつコマを動かし、サイコロを振って勝敗を決めるから時間も異常にかかる。少子化進行のとば口で、インドア少年たちがぶつかる、室内ゲームの壁はそこだった。対戦者が自動で自分の判断で動くことというのははるかに高いハードルであったのである。

変身ベルト 仮面ライダー変身ベルトが出たころはだいたい、戸外で「ごっこ遊び」をすることが多かったから、人手は足りた。実はスイッチを自分でスライドさせないとッ変身ベルトの風車は回らないのだが、そんなものは年少の子どもを背後に控えさえ、スイッチをいじらせればいい。ところが小子化の現代にあっては、どうも室内で変身ベルトを使用するシーンが想定されているようで、僕らの時代からは思いもよらない工夫がされているのであった。
 例えば「仮面ライダーブラック」のときはテレビから出る白い光をセンサーが感知して、ベルトの風車が赤く光って廻るという画期的な「テレビセンサー」がついていた。また、「仮面ライダーRX」のときは、ブレスレットを手首にはめ、振ると、電波が発信されてスイッチが入って回りだすという方式で変身と自動的にシンクロさせる仕組みだった。まさか単純なモーターとランプの変身ベルトがそんなに進化するとは夢にも思っていなかったから、大人になった僕はまたまた玩具で驚きを味わうことになるのであった。

書きおろし


2003年10月14日更新
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