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その75
「防諜」を訴える三猿貯金箱の巻
弓屋かえる堂さえきあすか


 一時期、古いモノの中でも貯金箱にしか目がいかない時期がありました。マイブームというか、ひとりで盛り上がってしまい、貯金箱を眺めに博物館へ行ったり、書籍を探したり。私にとって貯金箱は、夏休みの課題で何度もつくったせいなのか、貯金箱にお金を入れると親にほめられたせいなのか、懐かしさもあいまって、モノの存在としても、言葉のひびきとしても心惹かれるモノのひとつなのです。なので、私の部屋の飾り棚の中には、今でも数個の貯金箱が飾ってあります。
 そういえば、昨年の会社の忘年会で、景品に貯金箱をだしました。タカラトミーさんから発売された「人生銀行」で、500円玉を貯めれば貯めるほど、貯金箱の住人たちの生活が豊かになるという代物。発売当初から意識していた私は、使ってみたくて当たりたかったのですが、残念ながらハズレ。今度買おうと思いつつ、まだ買っていない貯金箱なのです。

 今回ご紹介する貯金箱は、忘れもしません。新宿の花園神社の骨董市で出会いました。それもデッドストックでまとまってでたのですが、見た瞬間、身体中にビビビっと電気が走るような、これほどまでに時代を物語った貯金箱には、今後出会えないかもしれないと思ったほど衝撃を受けました。それは陶製の貯金箱で全長125ミリ。「見ザル聞かザル言わザル」の三猿の形をしています。そして、猿のお腹には「防諜」という文字が描かれているのです。
 「防諜」という言葉は戦中にはよく使われましたので、マッチケースや文具などさまざまなモノに見ることができますが、三猿と合わせたところがすごいというか、意味が深いと思うのです。「身近にスパイがいるかも知れない、見ザル聞かザル言わザルのようになろう」と物語る貯金箱、本当に時代の産物だと思います。

三猿貯金箱
「三猿貯金箱」

 「見ザル聞かザル言わザル」という言葉は、昔から伝わる生きる知恵だと、私は最近とみに思います。祖母や母がよく使う言葉でもありましたし、時には見えなかったことにする、聞かなかったことにする、言わないでおくことが、人間関係をうまく続けるコツだと、昔の人はよくわかっていたと思うのです。
 最近は、見すぎて、聞きすぎて、言いすぎて、疲れている人が多いような気がするのは、私だけでしょうか。安易に見れること、安易に聞ける(読める)こと、安易に言える(書ける)ことの度がすぎると、人の気持ちのほうが右往左往してしまい、肝心な自分の本心が見えなくなるような気がして、時々怖くなるのです。現代の三猿貯金箱のお腹に文字を書くならなんでしょう。「情報」かな? 私的には…。なんて、戦前につくられた「防諜」三猿貯金箱を眺めていたら、そんなことを考えてしまいました。

三蛙貯金箱
「三蛙貯金箱」

    カエルの「見ガエル、聞かガエル、言わガエル」置物もあります。


2008年 7月2日更新
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その70 水アイロンと桜&鈴印のコテの巻
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