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「ら~めん路漫避行」タイトル

第34回 門仲運河に背脂かけて
~鉄橋架けた小名木川
刈部山本

今回は久々の門前仲町。【第8回】【第9回】に続いて、辰巳湯から清澄通りを北上、清澄白河駅へと向かう。

この界隈には深川江戸資料館に田河水泡ゆかりの「のらくろ~ど」、どぜうの「伊せ喜」とガイドブックでお馴染みのスポットが密集しているが、この連載では当然パス(笑)! 本当は潜り込むと興味深いエリアではあるのだが、それは期を改めるとして、駅の先、高橋の架かる小名木川を目指す。
第8回で述べたように小名木川は隅田川から分かれる水運の一つ。ほぼ一直線に荒川へと流れているのだが、これにいくつもの鉄橋が架かっており、これは実に興味深い。ならば鉄橋を巡ってみようと隅田川縁へ移動。

第1橋梁は松尾芭蕉が居を構えていたといわれる萬年橋。

萬年橋

1径間スチール・タイド・アーチ橋というらしい。なんでこういう構造で橋として支えられるのか素人目には不思議で仕方ない。調べてみたが、専門的で良くわからなかった。
アーチ橋というのは、弧を描いているアーチを両端で支えている。で、この弧を描いている部分が支えている力が両端に総てかかってくるので、この力をどう他の部分に分担し、バランスを取るかでその工法が変わってくるらしい。
とりわけタイド・アーチ橋は両支点部にかかる力を路面の桁で引張って打消すことで、地盤へのダメージを少なくしているとのこと。橋の上に出ているアーチのシルエットからはその力学が想像つかないが、結果独特のフォルムが出来上がっているこの機能美は魅惑的だ。

さて高橋を挟んで東側が西深川橋。

西深川橋

萬年橋と同じく昭和4年という八幡橋が移された同じ年。この年に一気に架橋されたのだろう。こちらは1径間スチール・トラス橋というらしい。
アーチ橋のような引張りの構造と異なり、桁と桁の間を渡す構造部分にスチールを三角形(トラス)に組んだ構造。ダンボールの断面のように、三角形の中が空洞で押す力に対して強く、そして軽く経済的とのこと。こちらは幾何学模様的なシルエット。この界隈の殆どがトラス橋となっている。

さらに東へ行くと、大横川とぶつかる手前に架かるのは新高橋。

新高橋

こちらもトラス橋だが、名前の割りに年季が入っており、錆びが鉄の闇的な迫力を感じさせてくれる。

大横川を越えると新扇橋が見える。この先の小松橋の間は閘門が設けられている。この界隈は海抜0m地帯で川の水位が違うため、水害に備え設けられている。

閘門

パナマ運河と同じ方式で、通行する船舶は閘門に入ると来た側の門が下り、進む側の水位と同じところまで水をためる(もしくは抜く)。取材時にちょうど一部始終を観察することが出来た。

閘門開閉

新扇橋側から入り、小松川橋へ抜ける際、どデカイ鉄板が水を滴らせ、低い軋み音を上げながらゆっくりと動作する様は圧巻の一言!

さてここからは大横川を経由して、木場公園を迂回するように一気に仙台堀川へ。さらに富岡八幡との中間あたりで分岐する平久川とにかかるのが亀久橋。

亀久橋

昭和4年のワーレントラス橋だが、親柱の行司の軍配のようなレリーフが面白い。

亀久橋レリーフ

亀を象ったと思われるが、ステンドグラスのようで薄ら中が見える

亀久橋から平久川に沿って南下すると、首都高9号深川線の高架下に出る。大きな遮音壁でより圧迫感を増しながらそれが何層にも重なり合い、西へ90度折れる木場ICだ。

木場IC

ここから福住ICにかけての区間は旧油堀川を暗渠化した公園(看板には管理用道路となっている)となっており、ゆっくり首都高を真下から鑑賞できる。

9号下 旧油堀川案内板

首都高と暗渠の間がそんなに狭いわけはないのだが、異様に暗い。

暫く高速下を進むと富岡八幡の裏手に出る。住宅の並ぶ何の変哲もない一角だが、家と家の間に遊歩道が、富岡八幡脇へと伸びている。緩く蛇行した道で、明らかに旧油堀川から分岐していたと思われる水路の線形だ。
この水路跡を進むと、八幡様の丁度真横辺りで、一本の鉄橋が目に飛び込んでくる。

八幡橋

ややくすんだ存在感を増す赤! 相当なインパクトのある鉄橋だが、なんでも国産第1号の鉄橋だそう。元々は弾正橋という名で明治11年に架けられたが、昭和4年に現在の位置に移された際、八幡橋と改名された。
鉄橋自体は構造のシンプルさが際立ったデザインで、シルエットがなんとも美麗。国の重要文化財に指定されているようで、細部には菊の御紋の意匠が施されているそうだ。

再び旧油堀川高速下に戻る。清澄通りとぶつかるところがもう福住IC。この地点に地下鉄門前仲町駅利用者のためだろう、高速下を利用した駐輪場になっている。

駐輪場

ここで暗渠真下追走が終わる。清澄通りに出ると、一般道へと繋がる線と本線が上下に微妙に折り重なる感じがつぶさに観察できる。

福住IC

とこの高速下に、いまや懐かしくなったネオンバリバリのラーメン屋の佇まいが浮かび上がっている。嘗ては環七など幹線道路沿いで、自分がラーメンを食べ始めた頃に流行っていたタイプだ。外観を見るだに無性に血が騒いじゃうのだ。丁度夜の帳が下りる時間、この手のラーメンをかっ食らう格好のタイミングだ。
らーめん弁慶佇まい

らーめん弁慶 門前仲町店
11:00~翌05:00
東京都江東区深川1-1-8
無休
http://www.ramenbenkei.com

ホープ軒に端を発する東京背脂豚骨醤油の傍系に位置する、昔馴染みの体育会系ハードボイルド・ラーメン。浅草の本店や堀切にも店を構え、街道沿いで夜中に彷徨える背脂ジャンキーの胃袋を温めている。
支店の中でもココ門前仲町店は2Fに椅子席を設けたものの、1Fは未だ立ち食いスペースを残している。
左手の券売機で食券を購入。注文と一緒に箸とおしぼりと水を受け取り出来上がりを待つ。厨房からと背後の車道からのノイズしかない空間。やっぱいいなぁ~

ラーメン@弁慶

らーめん麺カタ¥700は背脂に覆われよく見えないが、スープはタレの塩っ気が先にたち、ダシの味わいは控えめ。しかしここは背脂を食わせる味なので、そのための添え物と捉えた方がいいかと。
麺は中太で断面が丸くもっちり。ネギの辛みとモヤシのシャキシャキ感、そこに背脂と相変わらず薄いチャーシューの甘みが混ざるとなんともいえない口中快楽がある。
麺も多めでスープまで飲み干すとなると相当な総量になるので、粗方食べ終えたところでフィニッシュ。
改めてやっぱこの味は、テーブルに腰掛けて数人で食うんじゃなくて、雑踏の中スタンディングで足を踏ん張りつつ食ってこそだと思った。久々にこの快楽にありつけて大満足の後、家路についた。



刈部山本

刈部山本(かりべ・やまもと)とは・・・
ラーメンなどのB級グルメを主食とし赤線跡・軍事遺跡・レトロ建築等を巡る路地裏徘徊人。
東京の下町、谷根千の路地裏でカッフェーを自営。スペシャルティ珈琲・想いやり生乳・自家製ケーキで持て成す。サブカル・町歩き等の古本・ミニコミが並ぶ一角も。
結構人ミルクホールHP http://kekkojin.heya.jp/




2010年 3月 25日更新


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