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南陀楼綾繁

12月某日 六本木カラ高円寺マデ本ヲ求メテ一日旅行スル事【前編】


 昨夜遅くまでかかって、雑誌の編集作業がすべて終了。コレを「校了」と呼ぶ。今回も校了までの道のりは長かったなァ。いつも、そうか。仕事が終わった夜は、翌日をどう過ごすかというコトばかり考える。一日中ウチでゴロゴロしているのもイイが、こういう日には少しでも外に出てみたい。ナニしろ、この数週間ずっと家と仕事場を往復しているだけだったんだから。

 で、朝9時起床。10時にウチを出る。しばらく行ってないトコロに行こうと考えて、六本木に降り立つ。伝説的な品揃えだったレコード店〈WAVE〉が数年前に閉店してから、ココに来ることは滅多になくなった。いまでは行くのは〈青山ブックセンター〉ぐらいだ。この店はしょっちゅう来ているとつまらないが、タマに来ると珍しい本が見つかる。今日は、宮野力哉『絵とき百貨店文化誌』(日本経済新聞社)3800円、エリック・ホッファー『現代という時代の気質』(晶文社)1800円、花輪和一『刑務所の前』(小学館)952円、辰巳ヨシヒロ『大発見』(青林工藝舎)1600円を買う。

辰巳ヨシヒロ『大発見』
辰巳ヨシヒロ『大発見』

 あとで『大発見』を読んで、感動する。辰巳ヨシヒロは、1970年代の高度成長期に、うらぶれた人物が一瞬抱く希望、それがついえる瞬間を描いた。一コマのなかで絵に語らせる描写力は、ひょっとしてつげ義春よりも上なのでは、と思わせる時もある。この作品集に続き、過去の短編をまとめて出して欲しい。巻末の辰巳、山松ゆうきち、東陽片岡による「うらぶれ」座談会には笑った。この司会は大西祥平さんだな、きっと。

 六本木の交差点から坂を下る。この途中にいつも気になる看板がある。それは「レースクイーンがご案内するレースクイーンカフェ」というもの。読んで字の如しの内容なのだろうが、周りが比較的高級な店ばかりなので、この看板の浮き具合はすさまじい。秋葉原のコスプレ喫茶みたいに、街に溶け込んでいればイイのだけど。


レースクイーン・カフェ

男なら一度は行ってみたい!? レースクイーン・カフェ

 坂を下りきると、左側に〈東京ランダムウォーク〉がある。洋書を中心としつつも、和書の品揃えもイイ。工藤寛正『図説 東京お墓散歩』(河出書房新社)1800円、関川夏央・谷口ジロー『事件屋稼業』第2巻(双葉社)924円を持って、奥のデザイン書コーナーに行ったら、Roger Fennings『The Book of Matchbox Labels』(New Cavendish Books)4790円という本を発見。洋書のマッチラベル本は数あるが、この本はエルビス・プレスリーの写真マッチラベルなどというパチもんまで収録しているところに価値がある。


東京ランダムウォーク

おしゃれな外観の東京ランダムウォーク

 まだ午前中だというのに、しかも、今日はコレから古書展に回るというのに、もうふた袋分の本を買ってしまった。ずっしりと手に食い込む重さが気持ちいいやら、うとましいやら。麻布十番の駅まで行き、長い地下道を通って、改札に向かう。ところが、この辺りは最近、いろんな路線が開通していて、五反田にどう行ったら早いのか、さっぱりワカラナイ。

 とりあえず、白金高輪まで行けばいいかと南北線に乗るが、着いてからこの線だと目黒に出ることが判明。しかたなく三田線で三田まで行き、そこで浅草線に乗り換えるという、めんどくさいルートをたどって高輪台で降りる。ココで一軒古本屋に行くつもりが、前まで行ったら閉まっていた。五反田の古書展会場は、この高輪台と五反田駅の中間にある。歩いてもイイが、たまたまバスが来たので乗ってみる。ところが、次の停留所は五反田駅。ナンだ、また歩いて戻るのか。ついてない時はしかたないなァ。これで古書展で買うものがなかったらイヤだなと思う。

(以下次回)

『The Book of Matchbox Labels』

『The Book of Matchbox Labels』


2003年1月16日更新
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11月某日 晩秋ノ銀座デ裏通ヲ歩キ昔ノ雑誌ニ読ミ耽ル事
11月某日 秋晴ノ鎌倉ヲ優雅ナ一日ヲ過スモ結局何時モ通リトナル事
9月某日 渋谷カラ表参道マデ御洒落ノ街ヲ本ヲ抱エテ長征スル事
9月某日 小淵沢ノ夢幻境ニ遊ビ甲府ノ古本屋ニ安堵スル事
7月某日 週末ノ三日間、熱暑ノナカ古書展ヲ巡回スル事【後編】
7月某日 週末ノ三日間、熱暑ノナカ古書展ヲ巡回スル事【中編】
7月某日 週末ノ三日間、熱暑ノナカ古書展ヲ巡回スル事【前編】
7月某日 炎天下中ニ古書店ヲ巡リ、仏蘭西料理ニ舌鼓ヲ打ツ事
6月某日 W杯ノ喧騒ヲ避ケ、三ノ輪ノ路地ニ沈殿スル事
6月某日 昼ハ最高学府ニテみにこみノ販売法ヲ講ジ、夜ハ趣味話ニ相興ジル事
5月某日 六本木ニテ「缶詰」ニ感涙シ、有楽町ニテ「金大中」ニ戦(オノノ)ク事
4月某日 徹夜明ケニテ池袋ヘ出、ツガヒ之生態ヲ観察スル事
4月某日 電脳機械ヲ購入スルモ気分高揚セザル事


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