その28 愛国イロハカルタの巻
数ヶ月ぶりに友人ブーさんと会いました。待ち合わせ場所は新宿です。毎日暮らしているところが、とってものどかなところなので、新宿なんて出かけちゃうと、人の多さとお店の多さに目の玉グルグル! ビックリしちゃいます。
その上、夏のバーゲン時期とも重なって、セールと書かれた魅惑的な赤い紙に、ついつい吸い寄せられてしまうのです。中でもどうしても足が離れないのが鞄売り場。最近では実用を第一に考えられるようになりましたが(?)、多種多様の鞄が山のように並んでいるデパートは本当にツライ。目の毒であります。
そんな鞄を横目に、小田急デパートで開催されている『近くて懐かしい昭和展 東京・消えた街角』を見てきました。たくさんの人が入っていてビックリ。ひと昔前の時代に、多くの人が関心をよせているのですね。昭和30年代の東京の写真を眺めながら、あまり変化のない故郷を思い浮かべつつ、変貌のすごさに2人して見入っていました。
そんな会場をあとにして下北沢に行くことに。下北沢といえば、私の師匠のお店“月天”と、『その4 衛星優美・リリスマスクの巻』でご紹介した“あんてぃかーゆ”があります。この2店を中心に散策‥‥とはいっても、ひさしぶりの再会なので、しゃべる、しゃべる。お店を見ているんだか、話をしているんだかって感じです。
“あんてぃかーゆ”では、『愛国イロハカルタ』を買いました。昭和18年に日本玩具統制協会が発行したモノです。実はこのカルタは持っているんです。ただ以前買ったモノは、1枚だけ状態が悪くて修理されていました。それが今回出会ったカルタは、状態もいい上にお値段も安く、思わず2つ買っちゃいました。
戦時中に発行されたカルタだけあって、商品名からしてインパクトがありますが、絵柄はもちろんのこと、文字のほうもインパクトがあります。「ヰモンブクロニ テガミヲイレテ」とか、「シュッセイカゾクヘ オテツダヒ」など戦時下の状況を物語る文面に、当時の教育を垣間見ることができます。
そして、「ロバタデキク センゾノハナシ」とか、「コトバハ タダシク ハッキリト」なんて文字には、おじいちゃんやおばあちゃんが、孫に向かって話している様子がうかんできて、ほのぼのした気分になります。
おじいちゃんといえば、最近私が悩んでいるのは、近所の水路をお掃除しているおじいちゃんに、どうやったら自然に挨拶をできるかということ。挨拶したい気持ちはあるのですが、なかなかタイミングが合わないというか、勇気がいるというか、作業をしておられる背後から、いきなり挨拶するのもなぁ。まだ引っ越してきて1年だし、だけど町会費は毎月払っているんだけど。などと考えているのでした(挨拶ごときに情けない!)。
でも、バイト先のスーパーでは、たくさん挨拶をします。だって、お客さまのほうが挨拶してレジに入ってくるからです。「お願いします」とか「こんばんは」って。おつりをわたすと「お世話さま」、「ありがとうね」って。最初はものすごく驚いたのですが、とても気持ちのいいことです。もっとすごい年上の先輩になると、「今日のお仕事どうだった?」とか、プライベートの話までしているし、私も先日ぜんぜん知らないお客さまから、「今日房総にいったのよ。びわキャラメル、珍しいでしょ。食べて」って、ガバッともらってしまったし。どう考えても、ここは東京じゃない気がするんですよね。
こんなに明るくて元気のいい人たちが多い町を、私が気に入っているのはいうまでもありません。引っ越してちょうど1年。道端で挨拶する人も増えました。やはりここは勇気をだして、おじいちゃんにも挨拶をしたいものです。
話をもとに戻して、ブーさんと月天のご主人は5年ぶりの再会でした。再会を記念して夜遅くまで食事を兼ねての雑談会。現在の話。今後の話。結論は、
「とにかく健康でさえあれば、なんとかなるよね」
ってこと。そして、
「楽しいって思えるのって大事だよね」
という話から、私は本日楽しい気分にしてくれた、デパートで購入した真っ青な色の革の鞄を皆に見せたのです(欲望を抑えきれず買ってしまいました。ブーさんも似合うっていってくれたし‥‥)。
「また鞄買ったの?」
田口さんと、お店の女の子に呆れられたのはいうまでもありません。
ご案内
『その18 転んでもただでは起きない! 達磨の巻』でご紹介した、タゴモリノリコさんが絵本をだされました! 福音館書店発行のおおきなポケット9月号。「もののけ工作絵巻」です。絵本を読みながら工作もできちゃうという、1粒で2度美味しい絵本なのです。色彩が鮮やかで個性的な絵柄が魅力的です。書店で見かけたら、ぜひぜひ手に取って見てくださいね。
2003年9月9日更新
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