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「定食ニッポン」タイトル

天丼

第10回 神保町と言えば「いもや」

畸人研究学会今柊二



 神保町は、私にとって世界のなかで最も好きな街だ。営団地下鉄半蔵線の神保町駅から、靖国通りと白山通りの交差点のところで地上にあがり、岩波ブックサービスセンター(当時。現岩波ブックセンター)から九段下の方角に古本屋がズラリと並んでいるのを見た時は、本当に背筋がゾクゾクした。世の中に、こんなに古本屋が密集しているところがあるのかと、実に感動したものだった。

 で、さんざん本を買った後に何を食べるか。それはもう「いもや」で天丼を食べることに決めていた。大学入学当時の1986年は、私は本当に貧乏で、昼は学食の290円の定食、そして朝夜は日々米一合を炊いて、夜のおかずは1枚100円のチキンカツと千切りキャベツ(一週間食べる)かなんかを食べている程度だった。そんなものも食べられないほどお金がなくなったときは、グルメ本やガイドブックを買って、毎日それを眺めながら「ああ、これをいつか食べてやる」とつぶやいていたのだった。よく考えりゃ、「金がない」と言いつつ、グルメ本をなぜ何冊も買ったのかが理解に苦しむが、そのようなわけのわからん金の使い方が若さのバカさなのだろう。

「いもや」

 さて、所蔵の一冊に田舎者学生必携の「ぴあマップ」があり、神保町のところで「いもや」が紹介されていて、訪れる前からそれを食べようと心に決めていたのだった。なぜならば、値段が安く、おいしいと書いてあったからだ。

「いもや」 実際、神保町で「いもや」の場所はとてもわかりやすかった。あたりまえで、「いもや」が複数あったからだ。で、目指すべき天丼「いもや」は白山通りにあった。店は非常に混んでいたが、客は食べ終わればだらだら店にいないで、さっさと席を立つ。白木のカウンターがとても清潔なのと、白い割烹着のお店の人のてきぱきとした動きが印象的だった。さらに客に無駄口を一切きかないで、ただ会計のときに「ありがとうございます」と言うだけなのはとてもカッコよかった。店名は本家の主人が「私は田舎者のイモだから」ということで、「いもや」とつけたらしいが、私自身は客との距離のとりかたにむしろ東京らしいカッコよさを感じたものだった。このあたりが、実は同店が田舎モノをひきつける魅力の一つではないか。東京のカッコよさはあるものの、決して排他的ではなく、「ああ、俺は東京にいるんだなあ」としみじみと実感させるところあたりが。

 その後、現在に至るまで、私の「いもや」人生は続いている。相変わらず、店の人は適当にほっといてくれているが、一度だけ「てんぷらいもや」のほうで、夜に店に入った時、おやじに「ひさしぶりじゃん」と言われたことがあった。それほど頻繁に通っていたわけではないので、おやじは誰かと間違えていたのかも知れないが、ただそう言われれば言われたでうれしいものだった。なんだか認められた気がした。しかし、「いもや」で認められるというのも、妙なもんだよね(笑)。

天丼

 さて、肝心の天丼だが、1986年には確か450円で、2003年現在は500円なので、価格的には実にエライ。大盛りも飯粒をのこさなければタダというのも変わらない。ただ多少、上に乗っているてんぷらが微妙に変化している。ちなみに個人的には海苔の天ぷらが特に好きだなあ。なお、口直しとして、紅しょうがとつぼ漬けが置かれていて、このつぼ漬けがおいしくて、おおめに食べてしまうのだった。 てんぷら自体の味はエビをはじめ、からっと揚がっていて、たれはさっぱり系。「いもや」も含めて、天丼に関しては絶対西日本より東京のほうがうまいね、間違いなく。


2003年12月3日更新
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