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その34 「蛙のチンドン屋さん」メンコと
亀有名画座の巻

弓屋かえる堂さえきあすか

「蛙のチンドン屋さん」

 2月の第4日曜日午前9時。私は着物姿で浅草にいました。そうです。例によってチンドン屋さんのアルバイト。親方の美香ちゃんと、むっちゃん、谷島さん、私の4人でのお仕事です。
  約1年ぶりに浅草にやってきた私は、フト、浅草に住んでいる友人が頭に浮かびました。編集者の堀内恭さんと奥様です。今日は日曜日だし、お天気もいいし、浅草六区の前でチンドン屋さんのアルバイトだなんて、めったにないことだし、誘ってみようかしら? っていきなり思いついたのです。そしてすぐに電話。携帯電話はこういう時本当に便利ですよね。めったにかけない人でも、電話番号さえ登録しておけば、パッと連絡できるんですから。
 今回の宣伝はパチンコ屋さんです。けれど、今までやってきた場所と少々様子が違います。だって近所には場外馬券売り場がありますし、一晩中飲み続けて、めちゃめちゃテンションの高い若者や、観光客、それも人力車に乗っている人も多く、驚いたのは大きな人力車を女性がひっぱっていること。体力あるなぁと感心しました。私たちにたいしても視線が暖かく、たくさんの人が立ち止まって見てくれて、拍手をしてくれたり、撮影したり、手をふってくれたり、「がんばっているから、牛丼をおごらせてくれ」と話しかけてくれるのです。そんな人情味の厚い浅草が大好きで、長年住んでおられるのが堀内ご夫妻。お会いするのは5年ぶりくらいでしょうか。それもチンドン屋姿の私とです。後日届いたハガキに、
 「日曜日の六区のあの場所で、よくチンドン屋さんを見かけ、時々立ち止まってみていましたが、そこにカエルさんがいて、チンドンをされているとは。不思議な光景でした。」という感想と、
 「亀有名画座閉館5周年の小冊子を今作成中です。」と書いてありました。そうか。亀有名画座が閉館して5年経つのかぁ‥‥。早いのか遅いのか、なんだかしんみりしちゃいました。

亀有名画座

 亀有名画座といえば、秋本治さんの人気漫画「こちら葛飾区亀有公園前派出所」の115巻でも紹介されていますが、道路拡張のために1999年2月いっぱいで上映を終了し、その後芝居上演ののち取り壊されました。亀有名画座と支配人・今井さんに深い思いを寄せていた堀内恭さんは、できるだけ多くの人に名画座の最後を見てほしいと、私にまで声をかけてくれたのでした。

亀有名画座

 おかげで私は、亀有名画座を大切に思う人たちが集まって上映したラストショーと、その後のお芝居両方を見ることができたのです。でもピンク映画って見にいったことがなかったので、かなりドキドキしました。恐る恐る館内に足を踏み入れたのですが、不思議としんみりした空気が漂い、名画座を惜しむ人たちの気持ちが伝わってくるような、そんな上映でした。

亀有名画座

 亀有名画座のしめくくりエピソードを紹介している小冊子があります。『P・G No.59』です。こちらは堀内さんの友人がつくっておられるそうですが、記念に買ってみました。そういえば、閉館後に写真展も開催されたことがあり、亀有名画座のロゴがはいったオリジナルTシャツを購入したっけ。夏になると着ていますが不思議な縁を感じます。

『P・G No.59』

 ちなみに、漫画の中では主人公の両さんが、同僚の中川さんをつれて、閉館前の亀有名画座を訪れ、支配人の今井さんに名画座の歴史を聞きながら、仲間たちと一緒に、最後の客が帰るまで手伝うというお話です。秋山さん自身の思い入れも強いのでしょう。しんみりとした内容になっています。また120巻の裏表紙には、亀有名画座の写真も使ってあります。

亀有名画座

 名画座の近所に「かえる」という看板のお店を見つけましたので、記念に撮りました。残念ながら閉店しています。つくづくずっと同じでありつづけることは、とても難しいことだと思いました。けれど5年経った今でも、亀有名画座を伝えていこうとしている堀内さんの姿には心うたれます。

「かえる」

 

 さて、今回は何を紹介したらいいかなぁと悩んでいたら、天の助けといわんばかりに、カエルが描かれたメンコが2枚でてきました。それも、ただのカエルではありません。「蛙のチンドン屋さん」と書いてあり、チンドン屋姿のカエルが描いてあるのです。洋装でチンドン太鼓をたたいている蛙と、旗もちの蛙が楽しそう。まるで今の私のようではありませんか! なんだか運命を感じるなぁ。

「蛙のチンドン屋さん」メンコ

蛙メンコ

 これは以前『その23 「池袋骨董館」の「ラハリオ」からやってきた招き猫』でご紹介した、ラハリオのご主人からいただいたモノで、まさか将来チンドン屋さんのアルバイトをするなんて、夢にも思ったことがありませんでしたから、今のほうが縁を感じたりして。
 メンコといえば紙のモノが浮かんでくると思いますが、江戸時代には泥メンコがあり、板メンコ、鉛メンコなどいろいろありました。紙のメンコは明治からだそうで、当時は軍人や縁起物などの絵柄が多かったようです。世相を反映しているのですね。この蛙メンコは、チンドン屋さんが大活躍した、戦後から昭和30年代にかけてつくられたのではないかと思います。

弓屋かえる堂


2004年3月22日更新
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