その37 「更生の友」と「ナオール」こと、60年前の接着剤の巻
|
|
食器棚がきました。バーゲンで売られていた新しい棚です。本当は時間をかけて、ひと昔前の物を探したかったのですが、限りあるスペースと時間の中で、新しい食器棚を選択するしか方法がなかったのです。
けれど、今まではなかった食器棚がきたということは、非常に便利には違いなく、休眠状態にあった器たちが、棚の中にギッシリと並びました。どんな器かって?
古いモノを集めている人であれば、経験があると思いますが、古い器にはまる時期があるんです。私もその1人。棚の中に並んでいるのは、明治、大正時代につくられた器が大半をしめています。古い器といえば古伊万里や古備前、古唐津、はては李朝など、高価で奥深い世界に進んでいく人もおられますが、私の場合雑器というか、大量生産された印判のお皿や、茶色い「いげ」と呼ばれるギザギザの縁がついた「いげ皿」など、安くて丈夫なお皿止まり。幸か不幸か、お酒に弱い体質なため、ここでストップできているのだと思います。私のまわりは酒器から奥深い世界に進む方が多いから‥‥。
骨董市やアンティークショップで、「おもしろいな」とか「可愛いな」と思った、いろいろな模様のお皿を、ちょこちょこと集めてきました。丈夫で大きな「いげ皿」は、植木鉢の下に敷く受け皿として使ったり、冷蔵庫の上にドンッと置いて、タマネギやニンニク、ジャガイモを置いています。黄色い冷蔵庫の上に青い色が映えて素敵なんです(友人は目がチカチカするという)。それに、なんといっても図柄がいい! 光芸出版発行「いげ皿」の裏表紙にも載っていますが、鶴亀の縁起物のデザインで、亀は腹の模様まで細かく描いてあるという、実に見事なインパクトのある図柄です。
当時のお皿は、鶴亀、恵比寿大黒、松竹梅など縁起物をはじめ、干支や流行しているモノ、風景、人物が描いてあり、集めていくと時代が見えるというか、コレクションしている人も多いのです。そしてなにより、下手な料理をホローしてくれる存在で、料理がなくなると、楽しい図柄が登場してくれるのは、非常に嬉しく助かっています。
そんなお皿たちをしげしげと眺めていたら、欠けている器があるのに気づきました。完品であれば高価なのに、多少欠けていることで、破格な値段であることを喜び、つれて帰ったモノも何枚かあります。
「時間ができたら修理しよう!」
買った当初そう思ったんです。だけど、ここ数年の経験からして、「時間ができたら」と先延ばしにしていることは、何年経ってもできないという、これは私の精神力が弱いせいだと思いますが、この現実はかなり身にしみていました。
「修理しようと思って購入したお皿、どうしよう‥‥」
考え込んでしまいました。
「修理してみるか!」
思い立ったが吉日。欠けた器を修理する道具を探してみることに。なんでもポリエステルパテだか、透明エポキシ樹脂がいいとか。不器用なので上手にできるかわかりませんが、とりあえず探すことから‥‥です(この件に関しては、つづく)。
さて、今回は「修理する」ということから、ひと昔前の接着剤をご紹介したいと思います。まずひとつは、強力接着剤「更生の友」です。「接着剤の花形、ナンデモヨクツク」と説明書に書かれた、ガラス容器入りの「更生の友」は、甲陽科學工業所より戦時中に発売されました。未使用でまとまって“世田谷ボロ市”にでた時に、商品名の楽しさとお値段の安さに、喜んでつれて帰った一品です。もちろん60年以上も前の接着剤ですから、ガラスビンの中で固まっており、使用は不可能です。
もうひとつは、家庭常備接合剤「ナオール(NAOOL)」。こちらも同時期の代物で、製造販売をしたのは東亜商事特許品部です。そして「更生の友」も「ナオール」も「資源愛護」とか「廃品利用」の文字が書いてあることから、物資が不足していた当時が想像できます。けれど、商品名の楽しさといったら思わず微笑んでしまいます。ちなみに「ナオール」もガラスビン入り。こちらは使用した形跡があります。ほかにも楽しい商品名の接着剤があるのでしょうか。発見したら後日紹介したいと思います。
2004年8月11日更新
ご意見・ご感想は webmaster@maboroshi-ch.com
まで
その36 鹿の角でできた「萬歳」簪の巻
その35 移動し続けた『骨董ファン』編集部と資生堂の石鹸入れの巻
その34 「蛙のチンドン屋さん」メンコと亀有名画座の巻
その33 ドウブツトナリグミ・マメカミシバヰの巻
その32 ガラスビンと生きる庄司太一さんの巻 後編
その31 ガラスビンと生きる庄司太一さんの巻 前編
その30 『家庭電気読本』と上野文庫のご主人について‥‥の巻
その29 ちんどん屋失敗談とノリタケになぐさめられて‥‥巻
その28 愛国イロハカルタの巻
その27 ちんどん屋さんとペンギン踊りの巻
その26 「ラジオ体操の会・指導者之章」バッチと小野リサさんの巻
その25 針箱の巻
その24 カエルの藁人形と代用品の灰皿の巻
その23 『池袋骨董館』の『ラハリオ』からやってきた招き猫の巻
その22 東郷青児の一輪挿しの巻
その21 西郷隆盛貯金箱の巻
その20 爆弾型鉛筆削の巻
その19 へんてこケロちゃんの巻
その18 転んでもただでは起きない!達磨の巻
その17 ケロちゃんの腹掛けの巻
その16 熊手の熊太郎と国立貯金器の巻
その15 単衣名古屋帯の巻
その14 コマ太郎こと狛犬の香炉の巻
その13 口さけ女の巻
その12 趣味のマーク図案集の巻
その11 麦わらの鍋敷きの巻
その10 お相撲貯金箱の巻
その9 カール点滅器の巻
その8 ピンク色のお面の巻 後編
その7 ピンク色のお面の巻 前編
その6 ベティちゃんの巻
その5 うさぎの筆筒の巻
その4 衛生優美・リリスマスクの巻
その3 自転車の銘板「進出」の巻
その2 忠犬ハチ公クレヨンの巻
その1 野球蚊取線香の巻
→ |