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第21回 お好み焼きだって、
ごはんだ!(3)…明大前「とんぼ家」 |
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上京した当初は、それまで自分が育った文化と東京との違いに時折愕然とした。お好み焼きを巡る体験も例外ではなかった。大学入学後まもなく、知り会った大学の友人達とともに、渋谷に出かけた時のことだった。青山方面に抜けていく途中にある「ぼてじゅう」に入った。入ろうと言ったのは函館出身の男だったが、「ここはうまいほー」(こいつ、ややちくのうなので鼻に声がかかる)というので、「ああ、お好み焼きを食べるのも悪くないな」と思いつつそいつの後を追った。確かぶた玉を600円程度で食べたと思うが、味はともかくとして、四国で莫大な大きさのお好み焼きを300〜400円で食べていた私にとっては、値段にまったく比例しないその量に満足がいくものではなかった。
また、大学の最寄り駅の相鉄線の和田町駅には、商店街の横丁に入ったところに確か「一休」というお好み焼き屋があった。ここには東京には珍しく、「お好み焼き定食」があった。ちなみにお好み焼き定食というのはお好み焼きをおかずとして、味噌汁、御新香、ご飯がつくという代物で、さすがに四国でもこのパターンは食べなかったが、大阪ではよく食される。ただ、一休のものは量的にかなり上品で、爆発的な食欲を抱えていた20前後の頃に食べたから、かなり不満が残った。そのとき、「ああ、お好み焼きというのは所詮、東京人がものめずらしくたまに食べる食べものなのだなあ」という思いがより強まった。西日本出身者と知り合うたびに、「東京のお好み焼きがいかにだめか」という話題で盛り上がったものだった。
しかしその後、大学を卒業して東京をふらつくようになると、本気でお好み焼き、それも広島焼きを食べている街が2つ存在していることに気がついた。それは下北沢と明大前で、両方ともなぜか京王井の頭線沿線だった。渋谷と吉祥寺を結ぶスルドい電車のくせに、実に意外だった。ありがちな理屈で書けば「まあ、東京は田舎者の街だから」ということになろうが、なぜその二つの街に多いかはいまだに謎がとけない。で、下北沢のほうは、頻繁にタウン誌で紹介される有名な広島焼きの店が数軒あり、どの店も決してまずくはないが、決して安くはなかった。このあたりは実に「下北沢的」であった。下北沢というのは、一見ヤングの街で、居心地よさそうに目に映るのだけれど、実はあざとい街で、定食屋に関してもあんまりよい店はない。あっても、値段との折り合いがまったくつかない。「そりゃ、1200円も出せばいい定食が食べれるよな!」という感じなのだよ。安いのはチェーン店なので、貧乏な地方出身者はそちらにばかり入ることとなり、全然つまりません。
一方の明大前は、下北沢ほどメジャーではないが、この街は貧乏なヤングに真の意味でやさしい街で、なぜか広島焼きの店も数軒ある。なかでもオススメは「とんぼ家」。ここはスゴイ。何がスゴイって、広島焼きに入れるそば玉の個数を自分で決められるのだ。それでいて、値段は肉玉で700円。東京にしては破格に安い。味も実にオーソドックスな広島の味(おたふくソース)。マヨネーズも使い放題。それでそば玉をいくつ入れてもよいのだから、もう涙ものです。私にとっては、東京で出会った「お好み焼きオアシス」といったところですかね。
ちなみに、私は大体3玉入れてもらうので、写真のようにパンパンの大きさになるわけです、はい。
2004年6月18日更新
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