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「蕩尽日録」タイトル


8月某日 七夕祭ノ日、
酷暑ノ阿佐ヶ谷ヲ彷徨スル事
南陀楼綾繁


 仕事の打ち合わせで、阿佐ヶ谷にやってきた。ホームに降りたら、天井から大きな七夕飾りが下がっていたので驚いた。そうか、今日は阿佐ヶ谷の七夕祭りか。ハナシには聞いていたが、見るのは初めてだ。1954年(昭和29)に第一回が行なわれ、今年で53回目とのこと。

 この七夕祭りは、南口を出てスグのところにある「阿佐ヶ谷パールセンター」という商店街が舞台である。なんだ、ひとつの商店街だけの催しだとあなどるなかれ。ナニしろこのパールセンターは、「けやき通り」に平行し、最後は青梅街道に出るという700メートルもの長い商店街なのだ。ココのアーケードの天井から、数々の巨大なハリボテが吊り下がっている光景はナカナカに壮観である。各店の店主が自作しているらしい。アンパンマンやキティちゃん、トトロなどのキャラクターはすぐに判るが、なんだかよくワカラナイ飾りも多い。

巨大なハリボテ

 肉屋の前には、骨付きの丸い肉のハリボテがあり、「あの肉」と書かれている。おお、コレは園山俊二原作の原始人アニメ《はじめ人間 ギャートルズ》に出てくるあの肉(としか表現しようがない)じゃないか。ふと、その肉屋に目を移すと、店先で上のハリボテとまったく同じカタチをした肉を焼いているので、ギョッとする。アレを買う人はいるのだろうか。飾り物に力を入れるだけではなく、どの店の前にも出店がでており、ビールや焼き鳥を売っている。今日はこの夏いちばんの暑さだから、すぐに手が出そうなのを、コレから仕事だからと押しとどめる。店内でも割引セールをやっている。
 
 地下にある古本屋〈ブックギルド〉に入ると、ココでも1000円以上の単行本が2割引、500円の本は半額になるセールをやっていた。おお。20分ぐらいかけて全部の棚を見て回り、海野弘の『美術館感傷旅行』(マガジンハウス)1900円、『映画20世紀のアリス』(フィルムアート社)1200円、『現代デザイン』(新曜社)1200円の3冊を見つける。2割引ならぜひ買っておきたい値段だ。それと、500円のコーナーに、山崎幹夫『缶コーヒー風景論』(洋泉社)があった。「缶コーヒー」とタイトルにあるが、いわゆるコレクション本ではなく、そこから派生する無駄話が本領という奇書。出た当時(1993年)に愛読したが、250円なら買っておこう。レジで会計すると、ヨコにダーツがあった。七夕の期間に「ダーツ大会」を開催しているのだ。だけど、なにゆえ古本屋でダーツ? 古本屋といえば、〈ブックオフ〉の前にもタイムサービスの出店がでていた。ふだん、商店街とは相容れない傾向のあるコンビニやドトール、ブックオフといったチェーン店も、この七夕に協力している。

〈ブックギルド〉

 さらに南に向かって歩く。平日の昼間だというのに人出がすごく、なかなか前に進めない。反対側の出口に達するまでに15分ぐらいかかった。青梅街道に出ると、とたんに歩きやすくなる。この辺に変わった古本屋があると、友人から聞いていた。高円寺方向に2、3分歩くと、左側に古い建物があり、そこに「古本 益子焼 11〜18 あきら書房」と手書きされた板が立てかけてある。

〈あきら書房〉

矢印が示す方向はまったくの住宅街だ。電柱に汚い文字の看板が付けてある家が、その〈あきら書房〉らしい。どう見てもフツーの民家なんだけど。門を入ると、たしかに古本屋らしく、「岩波新書(戦前)、LPレコード、コミック」と書かれ、「玄関の中です。ご自由に入ってごらん下さい」とある。ぜひともご自由に入りたいところだが、入り口が開いてない。今日は休みなのだ。せっかくココまで来たのに残念だ。

〈あきら書房〉

 来た道を戻り、今度はけやき通りの方へ。打ち合わせを済ませてから、南口のガード沿いの方へ。しばらく前に開店し、いま阿佐ヶ谷でいちばんイキのいい古本屋〈風船舎〉に行くも、今日は休み。ついてないなァ。古本への欲望が満たされないせいか、代わりに(?)食欲が高まり、数軒隣のとんかつ屋〈とん亭〉へ。カウンターに座ると、お品書きに「コロッケ(タレントではない)」と書かれていて脱力したが、カツカレーはウマかった! 大皿にカツもルーもたっぷり。念願のビールも飲んで、暑気払い。いい心持ちで、阿佐ヶ谷をあとにしたのだった。


2006年8月31日更新
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