第２８回　ラーメンライスの極意（２）　中目黒・幸せの「夕焼けラーメン」

　大学生の時に感じていたことなのだけど、ラーメンにこだわる人は、自宅通学者に多いような気がした。結局、家に帰ればしっかりとした食事が用意されているので、外食は娯楽性に富んだものの方がよいというか、栄養よりも味にこだわりたいというような、「保険付きの遊び」のような感じがあるんじゃないかね。その点、地方出身者で、特に貧乏な場合は、まさに一食一食が真剣勝負で、一回の食事でなるべく安価に栄養を吸収せねばならないから、値段が中途半端に高くて、栄養もなさそうなラーメンにはどうしても触手が動かない。さらに、私の個人的な傾向として、栄養の点において「野菜強迫神経症」のようなものがあって、一回の食事でなるべく野菜を摂取してバランスを取りたいという観念が発達している。これは昔からの傾向で、子供のときに病弱だったがために、上京して病弱だと大変なことになるという恐れがそうさせているのだった。ゆえに野菜と呼ばれるものがネギとぎりぎりメンマくらいの、ラーメンなどとはあまりかかわりたくなかったのだった。
　 しかし、時折、ラーメンのなかにはもやしや青菜が入っているものや、タンメンなどという、まさに「野菜しっかり取れるよ〜」と主張するものがあることを知ってからは、やや状況が変化した。そういう野菜色の強いものにライスをつけて定食にしたらよいのだという発想が出てきたのである。

　その意味では日頃愛用している、東横線中目黒ガード下の「夕焼けラーメン」はなかなかのヒットである。店内は、今流行りの「つくられたレトロ空間」的で、石原裕次郎の映画のポスターが貼られたり、昭和３０年代ぽいフェイクの板塀と牛乳箱があったり、さらに薄型テレビでは小林旭の映画をやっていたりするような空間なのだった。おじさん的発想に立てば、「こういうまがいもの雰囲気の店は味もまがいものだろう」と思ってしまうのだけど、あにはからんや。最近は内装に凝っていて味もなかなかという店が増えているんですねえ。この「夕焼けラーメン」も実にうまい。白醤油系スープとのことだが、すっきりとした醤油スープでうまい。いいんだよ！ラーメンのスープはシンプルで！とどなりたくなるほどの正統なおいしさですわ。そして正統なくせに、この店が採用している太麺とよく合うのだった。さらにエライのは、豊富な具。海苔、おおぶりのチャーシュー２枚、もやし、メンマそして煮タマゴ入り。さらに卓上にあるスライスされたフライガーリックを入れると元気も出る。これで５５０円。１４時までは半ライスつき（梅干も食べ放題）。さらに麺類注文の人にはギョウザも１００円でつけられるのでサラリーマンの黄金中華定食といわれる「ラーメンギョウザライス」が６５０円で完成してしまうのだった。

　このギョーザが、また野菜をたっぷり感じるシンプルなタイプのもので、トータル的に野菜不足恐怖症の私にとってグッドな店なのだった。

2004年11月４日更新
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