その49 『Lunco』と『小さなレトロ博物館』、着物だらけの1週間の巻 |
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9月も中旬。どういうわけかこの数日間は、新旧の着物に縁がありました。1週間の間にものすごい量の着物を見たのです。こんなこともあるのですね。
9月15日木曜日。
『Luncoおりひめ』、『ギャラリーひこぼし』の2店舗が、『布と玩具 Lunco』としてリニューアルオープンしました。お店もJR目白駅から徒歩5分とかからない場所に移転http://www.lunco.net/。どんなお店になったのかと、ワクワクしながら訪ねたのです。とってもステキなお店だったのでご紹介します。
オーナーの永田欄子さんことランコさんは、その39「Luncoのオモシロ着物柄」の巻でもご紹介しましたが、本当にパワーのある魅力的な女性で、少し元気がない時に会ったりすると、あらあら不思議、スッキリ元気になってしまうという、栄養ドリンクのような貴重なヒトなのです。お店の中もそんな元気があふれているに違いありません。
まず目に入ってきたのはカエルです。ポストなのですが、大好きなカエルがお迎えしてくれたのは嬉しい。お店に足を踏み入れると、新しい建物の中にランコさんのセレクトした古い家具や着物、はぎれ、帯止め、玩具、雑貨たちが楽しく、それもセンスよく並んでいました。
「好きなモノだから伝えたいし、売れなくても楽しいの」
昔からそう話していたランコさんは、モノを呼ぶというか、モノが自然に集まってくる女性でもあります。案の定モノたちに囲まれて、ますます元気に、美しく輝いていました。そしてお友達の「カメンライダー」と「あんぱんまん」の人形をだっこして微笑む姿は、お店の女の子たちからは、
「今日だけはやめてほしかった」
って不評?の声が飛んでいましたが、本人はなんのその、気にする様子もなくニッコリ。あえて聞かなかったけれど、ランコさんの中では、この子たちとお友達になるまでの、ステキなエピソードがあるはず…。大人なのに少女のような、不思議な感性を持つランコさんが、見事に表現した新しいお店の誕生です。そして、お店の女性たちもステキな着物姿で接客しておられ、古いモノたちがイキイキと輝いて見えました。
私はそんな店内でモールのお花を摘みました。午前中に兵庫県から届いた新鮮なお花だそうです。私はこんなにモールが美しく、可愛らしく思えたことはありません。ランコマジックにひっかかったかな? と思ったりして。
それにしてもお客様の多いこと。大半が着物目当ての女性で、カガミを前にいろいろ試着しておられます。もちろん着物でいらっしゃる女性も多くて、目の保養になったというか、着物を1人で着ることができない私は、うらやましい思いで眺めたのでした。
興味のある方は、ぜひぜひ足を運んでみてくださいね。
週前半の9月11日日曜日、12日月曜日のこと。
同じく目白にある椿山荘5階にて、『ひしの美会』という着物の展示即売会がありました。その会場の片隅で、なんとわが家にいるガラクタたちを展示することになったのです。なんでも戦前の着物を展示するので、当時の生活雑貨も一緒に展示したいというお話に、軽い気持ちで引き受けたのは6月の話。まだまだ先のことだと思っていたら、あっという間にやってきてしまいました。
私は今回ほど骨董屋さんのえらさが身にしみたことはありません。たった4つのガラスケース展示分のモノさえ、箱につめるのに「あーでもない、こーでもない」と頭を抱えてしまったのですから。それ以前に展示するモノを選ぶだけでも、家の中も頭の中もグチャグチャ。思えば骨董屋さんは毎回骨董市があるたびに、荷物を運んで売れ残ったモノは片付けておられるわけで、本当にすごいですね。
ただ私の場合は売るわけではありません。着物を見にいらしたお客様に、昭和初期のモノを見て懐かしんでもらえたら…って思っているのですから、モノに対する説明文も必要です。その準備もたいへん。こんな時にかぎって仕事も重なってしまい、馴れない作業の合間に、お店のある神田鍛冶町まで原稿を届けたり、書籍を届けたり。何かをやるというのは本当にエネルギーが必要だと身にしみました。
『ひしの美会』の主催者である菱一さんは、戦前よりご商売をなさっている着物の問屋さんです。椿山荘での展示会も20年以上やっておられるそうで、そんな歴史のある会に、戦前の蚊取り線香やマスクなどを並べて大丈夫なのかしら? と本気で心配しつつも、10時の開場を前に2時間で必死にモノを並べたのでした。もちろん展示の経験なんて生まれてはじめてのこと。テーマごとにバランスを考えてと思いながらも、これがまた難しくて、私には不向きであるとわかった次第…。
10時を過ぎると、次々と関係者の方やお客様がお見えになりました。それも美しい着物姿の女性が大半で、椿山荘の上品で豪華な景色とも溶けあって、日頃見ない世界に素敵だなぁとうっとり。日本全国の織物が展示される会場で、いかに織ることが大変な作業であるかというお話などを伺いつつ…着物の世界は奥が深いなぁとあらためて思ったのです。そんな着物を眺めた後や合間に、たくさんのかたが私のモノたちを眺めてくださり、「懐かしいわ」と話題にしてくださったのは、とても嬉しい光景でした。それにしても、実に濃い、着物だらけの、それも目白に縁のあった不思議な1週間でした。
2005年10月5日更新
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