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「定食ニッポン」タイトル

第46回 銀座でカレー
畸人研究学会今柊二


大森 有楽町で用事が終わった。時間は土曜日の15時30分。まだ昼ご飯を食べていなかった。18時に人と打ちあわせの約束があって、そのとき夕食をとることになると思うが、それまで時間的にもちそうにない。結構中途半端な状況だ。しかたがないので、有楽町からJRのガードをくぐって、プランタンの方へと歩いていく。ここ、つまり有楽町から銀座にかけては、やはり特別な街だ。街を歩くことで華やいだ気持ちになることができる。道行く人々の顔がほころんでそして華やいでいる。確かに銀座オリジナルの店は、各地に次々と支店をつくり、銀座でないと買えない商品は少なくなったけれど、街を歩く楽しさ、ぶらぶら買い物をする楽しさに満ちている。だから、近くのターミナルデパートで買えるとしても、銀座プランタンのアンジェリーナでモンブランを買いたくなつたり、伊東屋でノートをついつい買ってしまうのだった。同じヨーヨー・マのCDを買うにしても、銀座の山野楽器で買うと、少し音がよいような気がする。そんなカリスマ性が銀座にはある。

「ニューキャッスル」

 そんなことを考えつつ歩いていると、シブ〜イお店が。看板には、大森とか品川とか駅名が書かれている。「ニューキャッスル」だった。おお、この店はグルメ本では何回も見たことがあり、それこそ大学生の頃からすごく気になっていた店だった。この中途半端な状況には、すごくよいタイミングだ。これは入るしかないと思ってドアをあけた。そこはなんだかクラシックな喫茶店といった雰囲気で、カウンターといくつかのテーブル席があり、何人かの先客がいた。とりあえず手前のあいている2人用のテーブルにこしかける。メニューは京浜東北線沿線の駅になっていて、品川、大井、大森、蒲田となっている。大井で530円。これでいいかと思って注文しかけるが、よく見ると玉子がついていない。大森だと量が増えて、なおかつ玉子つきで630円。やっぱりこれにしよう。ちなみに、「大森=大盛り」ということなのですね、この店は。「大井=多い」です。蛇足ながら。注文すると、わりと即座に出てくる。大森とはいいつつ、さほどの量はない。カレーの上に半熟の目玉焼きがのっている。うーん、ハンバーグもそうだけど、目玉焼きがのっていると「ごちそう感」が増しますねえ。黄身の部分を崩して、ルーとまぜて食べる。ルーはオリジナリティが高い味でわりと辛い。何しろこの店は辛来飯(カライライス)といっているくらいだから。どうにも独自性が強い店だなあ。しかし、この辛さ、かなり中毒性が高く、黄身とまぶしたことでルーがとてもまろやかになっていて、すごくおいしい。席の隣で、ヤングな女性が「野菜サラダとかありませんか?」とご主人にきくと、「いや、ルーのなかに野菜と果物は入っているから」と返されていた。この店は野菜と果物をルーにかなり投入してつくっているらしい。その意味ではリーズナブルでよいのだろうけど、ヤング女性は単にサラダを食べたかったのだろうね。

大森

 カレーは量のこともあって、ぱくぱくと食べているとあっというまに終わってしまった。終了後余韻が残った。おいしいカレーって、食べているときより、食べ終えた後のほうがおいしかったりする。つまり、食べ終えて店を離れてしばらくすると、カレーの風味が口のなかによみがえってきたりするでしょう? それがカレーを完全に消化したあとや、別の日にも出てきたりするので、みんなカレーが食べたくなるのです。ほかの食べものよりその度合は高いですね。しかし、それにしてもこの店は量が少ない。タイミングよく今日はこの後のスケジュールもあるのでこれでよいが、ふだんだとこれでは足りない。もう一皿は絶対食べられる。…と思ったら、常連のようなサラリーマンが入ってきて「蒲田ダブ玉」とつぶやいた。つまり蒲田740円(玉子つき)にもう一つ玉子を追加するということだな。そうか、そのくらいにしないと量は足りないのだなあと納得した。実は、その先に「川崎」もあったらしいが、今はないらしい(ただし、調べたところ裏メニューで「蒲田」の次という意味で蒲田+100円でツンカマというのがあるらしい)。

 …ということでお金を払って外に出ようとすると、ご主人が「お気をつけて!」と声をかけてくれた。
 カッコイイ! こういう言葉があるから、みんなは銀座を歩きたくなるんだなと思った。


お知らせ!
本連載「定食ニッポン」をまとめて大幅に加筆した「定食バンザイ!」がちくま文庫として、5月12日に発売されました! ぜひともよろしくお願いします。発売一週間で重版になるという異様な売れ方をしています。現在三刷までいきました。

「定食バンザイ!」


2005年9月14日更新
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