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その55
こわれてしまった
招き猫「三吉」の巻
弓屋かえる堂さえきあすか

 「形あるモノはこわれる」
母の口ぐせのひとつ。そのとおり。私もそう思います。
 でも、私が集めているモノは、うんと昔につくられたモノだから、こわれてしまったらすぐに買えないし、もしかすると一生会えないかも知れないわけで、「こわれないように」って、どんな移動でも大丈夫なように、頑丈なアクリルケースの中にプチプチで包んでしまっていました。そう、しっかり包んでいる…つもりだったのです。
 
 ところが、引っ越ししてから1年以上経って、ようやくケースを開けた時にギョッとしました。割れていたんです。招き猫の三吉が…。

招き猫「三吉」.
招き猫「三吉」

 そもそも私の引っ越しというのは、ダンボール箱などのケースが約200箱もあるという、ものすごい量で、その上今回の引っ越しは結婚&転職という転機でもあり、まずは環境に慣れることが重要だと、モノたちは押入れの中や生活の邪魔にならない場所に詰め込んでしまいました。生活空間を確保することを最優先させたのです。だからモノの点検をしたほうがいいとは思いつつも、無理だったというか…できずにいたんです。
 
 「仕方がない…」
 割れてしまった三吉を抱き上げてそうつぶやくも、
 「どうしてもっとしっかり梱包しなかったんだろう」
 「なぜこの子だけ別に運ばなかったの?」 
 「時間がなかった、それは確かにそう。だけど…」
 後悔と情けない気持ちでいっぱいになりました。
 
 割れた破片を拾ってみると薄い土の焼き物です。いろんな荷物と一緒に運んだのが間違いでした。でも何度も引っ越しを経験してきた子だから大丈夫だと、過信していた部分もありました。三吉は全体にヒビが入って背中部分は粉々。なのに、立つことはできました。最後の力をふりしぼって、何かいいたげでもありました。私は写真を撮ろうと思いました。ここで紹介すれば、こんな招き猫もいたって知ってもらえるのですから。あまり見ることのない珍しい招き猫だと思うのです。

三吉襖の前で
三吉襖の前で

 三吉が来たのは12年前のこと。当時親しくしていた業者さんから、わけてもらいました。なんでも関西から仕入れたそうで、材質や色合いから昭和28年頃につくられた招き猫だそうです(当時発行していたフリーペーパー『月刊魔法瓶』に詳しく紹介しているので、間違いない。そういわれたのです)。高さが30センチほどある大きめの猫で、左手で招いており、色鮮やかな前掛けを掛けているのが特徴です。前掛けには百万両や大福帳、小判、大入り袋と、縁起物らしい欲張りデザインがほどこされていますが、「王将」の将棋の駒も描かれています。「三吉」という名前は、関西からきたということ。将棋の駒から将棋が強かった「坂田三吉」さんからとりました。
 これからは、もっともっと慎重にモノたちとつきあいます。
 本当にごめんね。

前掛けには王将が
前掛けには王将が

本棚の前で
本棚の前で

テーブルの上で
テーブルの上で

 同じ頃に「ミーちゃん」も来ていました。この子も黒い招き猫で、左手で招いていますが、三吉より大きくて高さが40センチもあります。まるまると太っていて、今も部屋の隅にデンッと座っていますが、放し飼いになっている小鳥ちゃんの遊び相手になっているのです。

ミーちゃん
ミーちゃん

 「千客万来」、「商売繁盛」の縁起物である招き猫は、コレクションしている人がたくさんいますし、書籍もでています。古いモノをちょっとだけ集めてみても種類の多さにビックリするのですから、新しいモノも集めようとすると、想像するだけですごいことになりそうです。ちなみに右手で招いているのは一般家庭用で、家に幸福と金運を運んでくれ、左手で招いているのは、商売用でお客さまと招いてくれるとか。その上、手の高さによっても招く福や人が違い、色にも意味があるそうで、白い猫だと福を招き、黒い猫だと病をふせいでくれるそうです。けれど、それも地方によっていろいろないい伝えがあるとか…。実に奥の深い招き猫の世界です。
 例えばこんな書籍がでています。

『幸せの招き猫』 アマゾンへようこそ!

『幸せの招き猫』(河出書房新社)著者:藤田一咲、村上瑪論
招き猫の歴史にはじまり、古い招き猫はもちろん、看板や食品、手ぬぐいや熊手などさまざまな切り口で紹介しています。

 

『右手をあげる招き猫』 アマゾンへようこそ!

『右手をあげる招き猫』(PHP)著者:三橋 健
招き猫をはじめとする、縁起物の動物たちの由来を紹介しています。

『招き猫博覧会』 アマゾンへようこそ!

『招き猫博覧会』(パレットブックス)著者:荒川千尋、板東寛司
新旧問わず数多くの招き猫を、たくさんの写真で紹介しています。「ふるさと自慢、郷土玩具招き猫」は見るだけで楽しい。地域によっていろんな招き猫がいるのですね。


2006年8月17日更新
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