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その56 ケロちゃん色の帯と
 『LUNCOの夏着物展』の巻
弓屋かえる堂さえきあすか

 私が住んでいる築20年を優に超える賃貸マンションは、玄関を開けると目の前が台所。つまりデンッとテーブルが置いてあります。なので、テーブルまわりはすっきりとしつつも、古いモノをちょこちょこっと飾りたいって入居当初から考えていました。やっぱり玄関を開けたら、ホッとするような、楽しい気分になりたいですもん。レンジまわりのタイルがミントグリーンなので、タイルに合わせて台所はグリーン系の色で統一しようと思いました。
 幸い?私の大好きなケロちゃんは緑色。玄関を開けたらケロちゃんが座っているようにしました。帰るたびに「お帰り」っていってもらいたいしね。そしてケロちゃんの上には、ひと昔前に北欧でつくられたタペストリーを飾り、同じ絵柄の小さな敷物をテーブルの上に敷きました。この赤い小鳥は北欧の空を飛んでいるのでしょうか? 敷物の横にはマーガレットの刺繍がはいった古い花瓶敷き(フランス製)を敷いて、昭和10年代につくられたノリタケの花瓶にお花を飾ります。やっぱりお花っていいです。空気まできれいになる気がします。そして王冠の形をしたビンには、戦前のおはじきを入れて置いてみたりして。

わが家の台所
わが家の台所

 少しずつ華やか?になっていくテーブルまわりに、ニコニコしてきたのですが、右側の壁が少しさみしく感じました。使ってなかった金色の額縁を思い出し、戦前の絵葉書を飾ろうと、手持ちの中から物色。夕日が沈んだ後の初秋の山間の絵葉書がピピピッときました。写真ではありませんよ。なんと絵葉書なのに油絵なのです。今にも川を流れる水の音と虫の鳴き声が聞こえてきそうな絵で、故郷の大山を思い出す、お気に入りです。絵葉書のまわりは深緑色の布を使って額装してもらったので、違和感もなく?「なかなかいい感じ」と自己満足。そんなこんなで、わが家のテーブルまわりが形になってきたのですが、もう少し緑色が欲しいなぁと思っていた矢先、銀座松坂屋で開催された『銀座の大レトロ市』で、ケロちゃんと同じ鮮やかな緑色の帯と出会ったのです。
 「テーブルセンターにしたい!」
即決でつれて帰りました。テーブルの上に敷いてみると、何もない時よりも華やかで、まとまった感じがします。「メデタシ、メデタシ」と大満足です。 

なるべく緑色を使いたいと思っている
なるべく緑色を使いたいと思っている
松坂屋の骨董市で帯を発見!
松坂屋の骨董市で帯を発見!
早速テーブルセンターに
早速テーブルセンターに
この絵は戦前の絵ハガキ。油絵です。
この絵は戦前の絵ハガキ。油絵です。

 ケロちゃん色の帯は、『LUNCO』からやってきました(その3949参照)。
 「どうしてこんなに個性的な昔の着物が集まるのかしらん?」
 って、毎度のことながら感心するほどの品揃えです。そこでランコさんから『夏色リズム LUNCOの夏着物展』の案内状をいただいたのです。なんでも昭和初期に建てられた旧細川伯爵邸こと和啓塾本館で開催されるとか。旧細川邸には以前から行きたいと思っていました。こんな機会でもないと、なかなか行けません。平日の4日間なので時間的に厳しかったのですが、上司に強引に許可をとり行くことができましたのでご紹介します。  
 『夏色リズム LUNCOの夏着物展』は、『目白バ・ロック音楽祭』という、今年で2回目のイベントの中で開催する催しです。音楽を接点に目白の魅力を多くの方々に知ってもらいたいという趣旨ではじめられたそうで、目白にある歴史的建物の中で演奏会をされるそうです。そして音楽演奏だけでなく、写真展や個性的な催しも同時開催するわけで、ランコさんは“個性的な催し”をすることになったのでした。
 “コダワリ”の“カタマリ”のようなランコさんは、音楽祭に合わせて“リズム”や“躍動感”を感じる夏着物を厳選したそうです。ランコさんいわく、
 「和啓塾の建物の素晴らしさに感激したの。見劣りしないようにディスプレイからテーマから、真剣に取り組んだのよ。ぜひ見て欲しい!」
 とのこと。話しぶりからすごいことになっていそうです。 
 
 紫陽花が美しい6月も下旬。
 門から緑のトンネルを抜けて和啓塾の入り口を入ると、音符が描かれたピンク色の帯が出迎えてくれました。そして想像した以上に美しい建物に息をのみつつも、ステキにコーディネートされた着物たちが
 「どうぞ、いらして」
 と招いてくれているようで、吸い込まれるように階段を上りはじめました。上を見上げると、青空に向かって今にも飛び出しそうなツバメたちが描かれた着物が! なんだかドラマのような展開にドキドキです。2階には赤やピンク色の可愛らしい着物と帯がズラリ。言葉で表現できないくらい斬新でキュートなデザインの着物たちに、
 「昔の人のデザインはすごい!」
 って、声をあげたくなりました。和室や洋室、それぞれの部屋に似合った着物たちの展示にビックリ&うっとり。建物の美しさに負けないディスプレイ。まさに!です。私は興奮して写真を撮りまくりました。残念ながら室内が暗いので、いまいちの仕上がりでしたが…。でもでも、少しでも私の興奮がわかってもらえるように、写真をたくさんご紹介します(これでもほんの一部です)。

和啓塾入り口
和啓塾入り口

個展会場

個展会場

入り口から昔着物がズラリ
入り口から昔着物がズラリ
美しい階段の先には、今にも飛び出しそうなツバメたち
美しい階段の先には、
今にも飛び出しそうなツバメたち
古い洋館に昔着物はお似合い
古い洋館に昔着物はお似合い
タイムスリップしたみたい
タイムスリップしたみたい
ここはピンクの着物がズラリ
ここはピンクの着物がズラリ
絵柄の可愛らしさにうっとり
絵柄の可愛らしさにうっとり
帯がしっくりお部屋になじんでますう
帯がしっくりお部屋になじんでますう
見事なデザインです
見事なデザインです
 

嬉しそうな着物たち
嬉しそうな着物たち

なんだか話しているみたい
なんだか話しているみたい

ホレボレします
ホレボレします
部屋のデザインにも目を見張ります
部屋のデザインにも目を見張ります
紫の着物たちです
紫の着物たちです
 

着てみたいな
着てみたいな

広い和室にも左右にズラリ
広い和室にも左右にズラリ

ホント美しい着物です
ホント美しい着物です
日傘も一緒に
日傘も一緒に
美しいショールたち
美しいショールたち
楽器と着物の競演
楽器と着物の競演
時間を忘れちゃいました
時間を忘れちゃいました
カーネーションで揃えて
カーネーションで揃えて
可愛い装い
可愛い装い
花づくし
花づくし
しっとり着てみたい
しっとり着てみたい
涼しげでステキ
涼しげでステキ
斬新なデザインの帯
斬新なデザインの帯
ピンクで可愛く
ピンクで可愛く
船の帯と帯止めステキです
船の帯と帯止めステキです
これも着てみたいなぁ
これも着てみたいなぁ

 いかがですか? 大正から昭和初期の着物って本当にステキですね。閉館ギリギリまで着物を眺めていた私は、『夏色リズム LUNCOの夏着物展』って、女を磨きたくなる個展だなぁと思いました。ピンと背筋を伸ばしたくなるような、鏡に向かってお化粧をしたくなるような、「女性であることを楽しみたい!」って自然に思えちゃう、実にステキな個展でありました。


2006年9月7日更新
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