第53回 完敗!
札幌・牛太郎の恐怖の大盛り定食! |
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あるステキな読者の方からはげましのお便りがまぼろしチャンネルに寄せられた。さらに「札幌にはスゴイ店があります」との情報も。その情報によると確かにすごそうだった。店名は「牛太郎」。なんだか迫力ある名前だ。そこで、2005年10月に札幌で用事ができたので、時間をつくって行ってみることにした。
場所は北24条と元町の間だ。札幌駅からはやや遠く、中心地から微妙に外れている。どちらの駅からも徒歩15分くらいはかかりそうだったが、とりあえず北24条から歩くことにする。札幌の場合、道路が碁盤の目のようになっていて、わかりやすいのがとてもよい。ひたすら牛太郎の住所を目指して歩いていく。怪しかった雲行きが崩れて雨がポツポツと降ってくる。さらに10月なのでもはや寒い。「オレは札幌まできて一体何をやっているのか?」と我ながらアホらしくなってくるが、その気持ちをグッと抑えて修行僧のようにひたすら歩きつづける。ようやく、目的の地番にたどりつき、角を曲がるとスーパーの向こうに「牛太郎」の看板が!
時計を見ると12時半過ぎ。昼食にはベストタイムだ。今日だけはホテルのモーニングバイキングを泣く泣くお代わりせずに腹を空かせておいたのだ。やや緊張しつつ、牛太郎のドアを開ける。店内はやや古い感じの定食屋というかんじで、7割くらいの客が入っている。奥のテレビ前のテーブルが空いていたので、そこに座る。客は学生、サラリーマン、そして工事系労働者が適度に混じっている。メニューは壁に貼られていたので、とりあえずは「チキンカツ定食600円」をキッチンにいるお姉さんに伝える。この値段だけだと普通の値段だが。他のショウガ焼き定食なども600円台。メニューをみると店名の通り、もともとは牛丼が主力商品だったようで、普通盛りで480円。後から入ってきた学生も牛丼を頼んでいた。どうやらさほどは離れていない北海道大学の学生のお気に入りの店らしく、店内には学生寮関係の貼り紙がある。こういう大学生行きつけの店はまず外れることはないので、期待に胸が高まる。
「お待たせしました」との声とともにお姉さんがついに定食を持ってきた。
いやいやいやいや!
こりゃスゴイや。おかずの多さもさることながら、ご飯の盛りが恐ろしい。こんな大盛りは確かに見たことがないよ。読者の方のいうとおり、日本一かも知れないね。普通でこれなんだから、大盛りをオーダーすると一体どういうことになるのだろうか?
ご飯もすごいけど、おかずも大迫力! メインのチキンカツをはじめ、冷奴、肉団子とエノキの煮たもの、タクアン、そして味噌汁だ。さらにご飯をずらすと、ご飯のかげにイカ刺し身までついているよ(泣)。感動しているだけでなく、ついに摂食活動に突入する。まずはチキンカツを一口。サクリ。これはカラリと揚がっていてとてもいいかんじだよ。そしてご飯。大量に炊くごはんておいしいけど、これもその法則に則ったおいしさだ。炊き立てらしく米として純粋においしい。一口味わった後は猛然と食べはじめる。肉団子とエノキの煮たものも、ピリっと辛く、エノキもシャキシャキ。チキンカツの付けあわせのキャベツの上にはセロリも載ってある。いやいや、気が利いている。店全体から「おいしいご飯を一杯食べていってね!」という大きなプラスのエネルギーが出てるよ。
…しかし、それにしても、ご飯が減らない。掘っても掘っても米だらけだ。…なんとか丼の上半分が終了し、折り返し地点に達したが、もはや胃は満腹信号を発していた。…食べるのがつらくなってくる。ああ、20代の頃にこういう店に出会っていればさらに感動したのに…と回顧している場合ではない、こっちもプライドもあるので(何のプライドだよ?)、奮起して食べはじめ、肉団子を片付け、チキンカツをたいらげ、冷奴を押し込み、最後はイカ刺しとたくあんでご飯をなんとか食べ終える(イカ刺しのある意味がよくわかった)。
…とても苦しい。こんなに食べたのは久しぶりだよ。うれしいけど苦しい。と苦しがっているとお姉さんがなんと食後のコーヒーを持って来てくれた。スゴイサービスぶりだね。「いや、おいしい店ですね」というとお姉さん微笑んで「ありがとうございます」と。コーヒーもたっぷりあるよ(泣笑)。もはや胃は一杯なので、このコーヒーは食道に収まった。
…時計を見ると13時を過ぎていた。午後は用事があったので、店を去る事にする。食べたものが無事胃に収まっているようにそっと立ち上がって(笑)、お姉さんに600円払って入り口の方に向かうと、大学生が、家族をまかなえるんじゃないかという量の恐ろしい牛丼を食べていた…。
…すみません、今回は完敗です。
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2006年2月21日更新
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