その73
房総からやってきた ウランガラスのビー玉と貝殻の巻 |
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房総へ行ってきました。特急列車に乗って。毎度のごとく行き当たりばったりの小さな旅なので、乗る列車の名前だけ覚えて、 「すみません。特急わかしおのホームってどこですか?」
と東京駅の駅員さんに聞く始末。そこで京葉線だと知り、矢印にそって歩いて行ったのですが、ずいぶんと離れた所にホームがあり、間に合わないんじゃないかと思ってドキドキしました。座れないのは嫌だと思い、指定席を取ったのですが、窓際の席は取れず、今日は房総へ行く人が多いんだなぁと思ってギリギリ飛び乗ると、後方の自由席はガラガラです。「指定席を取るんじゃなかった。失敗、失敗」と思いながら、空いている自由席へ移動し、2席を陣取っての出発となりました。 季節は冬から春への変わり目です。暖かさと時折吹く風に肌寒さを感じつつも、列車から見える菜の花や梅の花、緑の新芽たちに春を感じて嬉しくなります。向かう房総半島は、私にとって辰の方位。今回の旅は、その65、その68同様に、方位取り&神社参りが目的なのですが、不思議なことに古いモノにも縁があることが多いのです。たまたま歩いていたら、骨董屋さんに出会いモノと出会う。予期せぬ出会い。こんな偶然の出会いが一番楽しいです。
骨董屋さんからやって来たモノたちをご紹介しましょう。
1つめは、黄緑色のガラスでできた貝殻です。手の平にのる大きさで、小さな気泡も可愛らしく、お店の人がいうには、大正時代につくられたモノじゃないかとのこと。そして、 「ウランガラスでできたビー玉もあるのよ」
と、黄緑色のビー玉を箱から取り出してくださり、ウランガラスか確認できるようにブラックライトを当てて、蛍光に輝く様子を見せてくれました。古いビー玉は何個か持っていますが、ウランガラスのビー玉ははじめてです。
「きれい…」
思わずウットリしちゃいます。ウランガラスといえば、『和ガラスに抱かれて』(写真・文:坂崎幸之助 発売:平凡社)の中で、数多くのモノたちを紹介しておられるので、興味のある方はぜひ見て欲しいのですが、日本では大正から昭和にかけてつくられたそうで、ガラスの中にウランが溶融しているため、ブラックライトを当てると紫外線に反応して、蛍光に輝くのです。貝殻の中にビー玉を入れてみると、まるで真珠のようです。九十九里浜も訪れたので、この土地にぴったりのモノだと思い、嬉しくなりました。
2つめに、鳥が型押しされた透明のガラス瓶です。
波と一緒にゆらゆら揺れている水鳥ですが、波と千鳥なのでしょうか? 波千鳥は小袖の染織文様をはじめ、器などさまざまなモノに見ることができますが、人気のある和風柄とひとつです。人生に例えられる荒波の上を、力いっぱいに飛び越えていく小さな千鳥は、そうありたい人々の願いが込められた図柄なのです。ここ数年、表情豊かな鳥の可愛らしさに目覚めた私は、この鳥柄瓶もつれて帰ることにしました。貝殻同様、海に縁のある一品です。初春の房総からやってきた、海の香りがしそうなモノたちは、偶然の出会いとしては、本当にラッキーな出会いでした。
肝心の神社参りは、骨董屋さんで時間を取り過ぎたために、パッとすませて(ごめんなさい)、お楽しみのお昼ごはんは特上にぎり寿司と、おやつは海岸近くの喫茶店ではケーキセットを食べました(やせないワケです。 トホホ…)。そして産地の味噌、イチゴ、ブロッコリー、シイタケを購入し、まるで、行商のおばちゃんのように両手にいっぱいの荷物を持ち、特急列車に乗って帰ったのでした。
2008年4月2日更新
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