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「ガラクタ商店街」タイトル

その79
『山梨水晶』商品カタログと
“ブルームーンストーン”に
恋をするの巻

弓屋かえる堂さえきあすか


 昭和10年に山梨水晶株式会社から発行された、『山梨水晶』の商品カタログがあります。水晶といえば、山梨県が産地であったことは有名で、こんなカタログもあったのかと、数年前に古書店で見つけた時はドキドキしました。ページをめくると指輪やネックレス、ブローチ、カフス、帯止、かんざしなどの装身具や、印鑑、数珠、観音様の置物や水晶玉などを販売しておられます。

山梨水晶 表紙
「山梨水晶 表紙」

 残念ながら現在は山梨県で水晶の採掘はされていないそうですが、銀座に水晶を商うお店で、文政元年(1817)に甲府市で創業した、“玉泉堂”(東京都中央区銀座6-4-5)があることを知りました。ビルの1階ですが、店内に一歩足を踏み入れると、和風の佇まいで、印傳の鞄や財布などと一緒に水晶細工の根付や、ネックレス、指輪、水晶玉、数珠などを販売しておられます。一瞬山梨のお土産物屋さんへきたような、「ここは銀座かしらん?」と思ってしまう、時間の流れをゆっくり感じられるところで、水晶の小さな玉を、印傳の小さな袋に入れて、お守りとして持ち歩くというお話に、古来より水晶とつきあってきた山梨の歴史を垣間見たような気がして、嬉しくなりました。

山梨水晶 カタログページ
「山梨水晶 カタログページ」

 山梨水晶のカタログがやってきてから、私は採掘された石の歴史に興味がでてきました。地中から産まれる“たからのいし”こと宝石に魅入られる人たちの歴史。ロマンがありますよね。その後、水晶からはじまって、いろいろ調べたり、見ていくうちに、ある石にひとめぼれをしてしまったのです。その石の名は、「ブルームーンストーン」。まるで海のような、空のような、はては宇宙から見た地球かと思うような美しい青さで、こんな石もあるのかと息をのみました。
 和名で「月長石」と呼ばれるムーンストーンは、普通は半透明の乳白色ですが、オレンジ、ブラックなど種類があり、ブルーでも「ロイヤルブルームーンストーン」とか、「ロイヤルブルームーンストーンレインボー」と呼ばれる石もあるそうです。原産国はインド、スリランカ、マダガスカル、ミャンマーなどで、インドでは古来より「聖なる石」として重んじられ、ヨーロッパでは「旅の安全を守る石」として、身につけて旅にでたとか。そして角度によって浮き上がる青白い光「シラー」が、月光を思わせるためか、月のエネルギーを宿した神秘的な石として、また女性の象徴である月を宿す石ということで、女性のお守り石としても愛されてきたそうです。

ブルームーンストーンクロスペンダント
「ブルームーンストーンクロスペンダント」

 そんなお守り石でつくられたジュエリーに出会ってしまいました。石にひとめぼれをしてから、1年以上経ってのことです。銀座にあるアンティークジュエリー専門店“ギャラリートイダ”のガラスケースの中で、シルバー製のクロスペンダントが輝いていました。そのペンダントには、カボション・カットされた美しいブルームーンストーンが、なんと11個もついており、それも1900年頃に英国でつくられたジュエリーで、古いモノが大好きな私の目の前に、100年以上前の石がでてきてしまったのですから、ビックリ仰天です。即座に欲しいと思ったのですが、方位とり(その65参照)を積極的にしている私としては、クロスモチーフは、ちょっぴり抵抗がありました。でも、子供の頃は教会に通っていて、聖書の言葉に救われたことがたくさんありましたから、今後クロスはいいことにして、つれて帰ることにしたのです。
 自宅へもどると、すぐにケースからだしてみました。やっぱり美しい。吸い込まれそうな青さです。つれて帰ってよかったと心から思いました。この石は、つれて帰らなければ後悔したに違いありません。しばらくジッと眺めていたら、子供の頃大好きだった、いがらしゆみこさんの漫画『キャンディ・キャンディ』の中で、キャンディが持っていたクロスのペンダントを思い出しました。あの頃、欲しかったんですよね。なんだか嬉しい気持ちと一緒に、懐かしい気持ちまでこみあげてきます。

ブルームーンストーンクロスペンダント
「ブルームーンストーンクロスペンダント」

 願わくば、100年前に英国で生まれたこのジュエリーが、日本へやってきてガッカリなんてことのないように、自分自身を磨き続けたいものです。いえ、これから磨きはじめなければ…。




2008年 11月 25日更新
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