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「ガラクタ商店街」タイトル

その92
「萬年海綿器」の仲間
「スタンプモイスチャー」を
神保町で発見!の巻

弓屋かえる堂さえきあすか


スタンプモイスチャーと萬年海綿器

   ふっと、ショーウィンドー越しに飾られたモノと目が合って、足を止めました。ずいぶんひさしぶりの感覚だなぁと思いつつ…。

   本の街として有名な神保町の、書店街からは少々離れた場所に、そのお店はありました。ビルの1階といえど、オフィスビルに囲まれた場所だから、急ぎ足で過ぎてしまえば気づかなかったかも知れません。
  ガラス越しに店内全体を眺めてみると、蓄音器やSPレコード、オルゴール、ラジオ、ビクターのマスコットキャラクター・ニッパーグッズや、楽器などなど、ひと昔前の高級感溢れる音楽に関連したモノたちが、新品かと思ってしまうほど状態よく並んでいます。どれも木製なので、ビルの一室でありながら、懐かしいような、あたたかいような、マニアックな店構えに、神保町にもこんなお店があったんだと嬉しくなりました。
  考えてみれば、この街には書籍ばかりでなく、レコードを商うお店もたくさんあります。CDでは満足できない“音”を求めて、レコードを選んでいる姿は、見ているだけで懐かしい感じがしますが、残念ながら私の生活の中からは、レコードは消えてしまいました。でも、レコードはありませんが、とっくの昔に消えてしまった生活雑貨や文具などは、わが家にはたくさんいるわけで、今回ご紹介するモノもそのひとつです。

スタンプモイスチャーくる

   ショーウィンドー越しに目が合ったのは、その59でご紹介した「萬年海綿器」と同様の機能をもつ、アメリカ生まれの「スタンプモイスチャー」です(使用方法は、その59に詳しく書きましたので、そちらを読んでくださいね)。
  音関連のモノばかり並んでいる中で、ガラスケースの中に、ちょこんと置いてあったのです。非売品かとも思いましたが、ここで出会ったのもなにかのご縁とばかりに、売り物なのか聞くだけ聞こうと訪ねてみました。
  「すみません。ガラスケースの中にある、陶製の切手を貼る…、これは売り物ですか?」 ダウンコートを着て、毛糸の帽子を深くかぶり、大きなマスクをした、見るからに怪しげ?な姿で現れた私に(今年の東京は寒いです。お昼なのに気温は5度。今夜は雪になるとか)、ちょっと驚いた様子で、奥から店長と思われる渋い男性が出てきました。もうちょっとマシなカッコでくればよかったかなと思ったりして。
  「売り物ですよ。これがなにかはわかっておられますね」
  「はい。わかります」
  そんなやりとりをしながら、どういうわけか文京区の湯島にあった骨董店“パニポート”の店主坂本さんを思い出していました。なぜでしょう? いきなり入って値段を聞いた感じが似ていたからか、お店のご主人に威厳というか、貫禄があって、値段を聞く時にオドオドした自分を思い出したせいなのか。そう、偶然の出会いにワクワクとドキドキがまざった感覚です。

スタンプモイスチャー裏面

   余談になりますが、その時パニポートで購入したモノは、濃いグリーン色をした農業協同組合のブリキ製貯金箱。ものすごく緊張して値段を聞きました。以前発行したミニコミ誌『おこづかいは500円』の中でも紹介していますが、なんと!!500円という金額でした。

農業協同組合貯金箱

   「本当に500円でいいんですか?」と驚く私に、
  「私はもう十分楽しんだからいいんですよ。あなたも楽しんでくださいね」 と、坂本さんが笑いながらいってくださったこと、強く印象に残っています。
  古いガラクタを集めはじめた頃の話ですから、ますますこの世界に惹かれていくキッカケになったのは、間違いありません。ちなみに購入日は、平成3(1991)年11月4日です。もう18年も前の話になってしまったのですね。

おこづかいは500円

   さて、話を現在に戻しまして、スタンプモイスチャーの肝心なお値段は、当然500円ではありませんが、私的に納得の金額でしたので、いい出会いだなぁと喜んでつれて帰りました。家に帰ると、さっそく萬年海綿器と一緒に並べてみました。ほとんど大きさは変わりません。形は違いますが基本的な構造は同じですから、ますます仲間だと思い、ニンマリしちゃいました。

   ただ、アメリカ生まれのスタンプモイスチャーのほうが、日本生まれの萬年海綿器より、デザインもシンプルで洗練された感じはしますね。…いいんです。萬年海綿器は、商品名もユニークで、デザインもやぼったいけど、そこがまた可愛らしくて、心惹かれるモノなのですから。それにしても、予期せぬ出会いって本当にワクワクします。思いがけないステキな出会いでした。

萬年海綿器裏面



2010年3月19日更新


その91 大正6年1月1日号『三越』の表紙は、杉浦非水画キューピーの巻
その90 絵葉書に見るキューピーのお正月の巻
その89 クリスマスにキューピーのペーパーウエイトの巻
その88 雪が谷大塚からやってきた、「溶鉱炉水滴」と「スズメの豆皿」の巻
その87 まぼろしの神保町絵葉書とまぼろし骨董館の巻
その86 防虫消毒香料発散機「ムシキラー」の巻
その85 笠間骨董我楽多市と一富士二鷹三茄子筆立ての巻
その84 喫茶店の中の東京タワーと『世界一の東京タワー』絵葉書の巻
その83 東洋の宝石「帝国ホテル・ライト館」名刺入れの巻
その82 昭和初期につくられた簪を入れた小引き出しの巻
その81 OCCUPIED JAPANの小箱と『伝統工芸 東北のこけし』の巻
その80 マツダセレクトスイッチ電気時計と『実用 電気時計総説』の巻
その79 『山梨水晶』カタログと“ブルームーンストーン”に恋をするの巻
その78 “タンク式洗濯器”と向田邦子さんを真似て古い小鉢を買うの巻
その77 たばこ祭りで買った煙草煎餅と煙草図柄皿の巻
その76 昭和13年ライオン常用日記と手帳の巻
その75 「防諜」を訴える三猿貯金箱の巻
その74 ビー玉、水晶、真珠、まんまるに惹かれての巻
その73 房総からやってきたウランガラスのビー玉と貝殻の巻
その72 切れ端の写真立てと国旗柄写真立ての巻
その71 富山の薬箱はひきだしの巻
その70 水アイロンと桜&鈴印のコテの巻
その69 『がらくたからもの』対談と主張する平和記念“糸とおし”の巻
その68 宇都宮からやって来た鳳凰が描かれた小箱の巻
その67 野球少年柄のランドセルとランドセル柄の帯の巻
その66 三峯神社と戦前の迷子札の巻
その65 浦賀からやってきた江戸時代の灯芯押さえの巻
その64 戦前の牛乳ビンは花瓶の巻
その63 便利な実用品『回轉式踏台』の巻
その62 美味しい野菜&野菜種袋の巻
その61 元旦の福袋!日満ポンプと戦前鉛筆削りの巻
その60 国産マッチ創始者『清水誠』とマッチ入れの巻
その59 “萬年海綿器”と“スタンプモイスチャー”の巻
その58 上野「十三や」のつげ櫛の巻
その57 斎藤真一『紅い陽の村』と『夫婦岩』の大皿の巻
その56 ケロちゃん色の帯と『LUNCOの夏着物展』の巻
その55 こわれてしまった招き猫「三吉」の巻
その54 下北沢の『古道具・月天』と画期的発明鉛筆削りの巻
その53 無料で魅力的なモノ、例えば「ケロちゃんの下敷き」の巻
その52 時間の整理と時間割の巻
その51 自分へのごほうび、昔の文房具に瞳キラキラの巻
その50 アンティーク家具を使ったブックカフェで…の巻
その49 『Lunco』と『小さなレトロ博物館』、着物だらけの1週間の巻
その48 コルゲンコーワのケロちゃんと『チェコのマッチラベル』の巻
その47 「旧軽の軽井沢レトロ館にてレースのハンカチを買う」の巻
その46 濱田研吾さんの『脇役本』、大山と富士山型貯金箱の巻
その45 横浜骨董ワールド&清涼飲料水瓶&ターコイズの指輪の巻
その44 『セルロイドハウス横浜館』とセルロイドのカエルの巻
その43 奈良土産は『征露軍凱旋記念』ブリキ皿の巻
その42 ブリキのはがき函と『我楽多じまん』の巻
その41 満州は新京の絵葉書の巻
その40 ムーラン鉛筆棚の巻
その39 「Luncoのオモシロ着物柄」の巻
その38 ペンギンのインキ壷の巻
その37 「更生の友」と「ナオール」こと、60年前の接着剤の巻
その36 鹿の角でできた「萬歳」簪の巻
その35 移動し続けた『骨董ファン』編集部と資生堂の石鹸入れの巻
その34 「蛙のチンドン屋さん」メンコと亀有名画座の巻
その33 ドウブツトナリグミ・マメカミシバヰの巻
その32 ガラスビンと生きる庄司太一さんの巻 後編
その31 ガラスビンと生きる庄司太一さんの巻 前編
その30 『家庭電気読本』と上野文庫のご主人について‥‥の巻
その29 ちんどん屋失敗談とノリタケになぐさめられて‥‥巻
その28 愛国イロハカルタの巻
その27 ちんどん屋さんとペンギン踊りの巻
その26 「ラジオ体操の会・指導者之章」バッチと小野リサさんの巻
その25 針箱の巻
その24 カエルの藁人形と代用品の灰皿の巻
その23 『池袋骨董館』の『ラハリオ』からやってきた招き猫の巻
その22 東郷青児の一輪挿しの巻
その21 西郷隆盛貯金箱の巻
その20 爆弾型鉛筆削の巻
その19 へんてこケロちゃんの巻
その18 転んでもただでは起きない!達磨の巻
その17 ケロちゃんの腹掛けの巻
その16 熊手の熊太郎と国立貯金器の巻
その15 単衣名古屋帯の巻
その14 コマ太郎こと狛犬の香炉の巻
その13 口さけ女の巻
その12 趣味のマーク図案集の巻
その11 麦わらの鍋敷きの巻
その10 お相撲貯金箱の巻
その9 カール点滅器の巻
その8 ピンク色のお面の巻 後編
その7 ピンク色のお面の巻 前編
その6 ベティちゃんの巻
その5 うさぎの筆筒の巻
その4 衛生優美・リリスマスクの巻
その3 自転車の銘板「進出」の巻
その2 忠犬ハチ公クレヨンの巻
その1 野球蚊取線香の巻


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